2025年12月16日、フランスのルノー・トラックスは100%電気トラックによる工場間の物流フローを構築したと発表した。自社のBEV大型トラック「Eテック T」22台によるリレー輸送で、工場のジャスト・イン・タイム物流を実現している。
ディーゼル車より航続距離が短く、充電のための時間も必要なBEVトラックは、電動の輸送に適した物流システムを構築しないと普及が進まない。トラックメーカー自身が自社の物流を電動化した手法には、参考になる点も多そうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks
ルノー、電気トラックだけで工場間物流
およそ1年前にリヨン工場とブールカン=ブレス工場の輸送をバッテリーEV(BEV)トラックにより電動化したフランスのルノー・トラックスだが、工場間物流の電動化をさらに発展させたことを2025年12月16日に発表した。
3つの工場と3つの中継拠点を活用する複雑な「電気回廊」を運送会社のマルエルブ社と共同で構築し、ルノーの製造拠点間でキャブ、エンジン、アクスルを輸送している。
ルノーの大型車製造拠点はフランス各地に点在しており、フランス北部にはカルバドス県のブランヴィル=シュル=オルヌ工場があり、アン県のブールカン=ブレス工場やローヌ県のリヨン工場などはフランス南部にある。加えて、自動車の工場はジャスト・イン・タイム(JIT)方式でラインが稼働しており、必要な部品が必要な時に供給される必要がある。
現状ではBEVトラックの航続距離はディーゼル車に及ばず、短距離であれば単純な置き換えにより電動化することも可能だが、距離の離れた多数の拠点でJIT方式の工場物流を実現するには、物流フロー全体を再設計しなければならなかった。
ルノーはブランヴィル工場で大型トラックのキャブを製造し、ブールカン=ブレス工場で大型車の組み立てを行なっている。リヨン工場では中型トラック向けのエンジンとアクスルを製造しており、ブランヴィル工場で中型トラックを組み立てているという。
この工場間物流をほぼ100%電動化するため、マルエルブの3つの中継拠点に充電ステーションを整備した。フローの全体を北ループと南ループの2つに分け、合計で22台の大型BEVトラックによるリレー方式で荷物を運ぶことで、電動化を実現した。
ルノー「Eテック T」22台が荷物を動かし続ける
22台のBEVトラックは全てルノーの「Eテック T」だ。北ループと南ループにそれぞれ11台ずつ投入している。
北ループはブランヴィルとヴィロンヴェ(262km)の往復と、ヴィロンヴェとオーセール(548km)の往復となっている。南ループはオーセールとマコン(480km)の往復、およびマコン・ブールカン=ブレス・リヨンの3地点のループ(224km)となる。
この4つのルートをループして回り続けることで荷を運ぶ仕組みだ。
BEVトラック1台の1日当たりの走行距離は、北ループで810km、南ループで704kmとなる。ドライバーとトラクタ、トレーラを交換するリレー輸送となっており、BEVトラックは充電のために、ドライバーは休憩のために動けない時間が発生するが、リレー方式により荷物は動かし続けることができる。
こうした仕組みにより長距離かつジャスト・イン・タイムの工場物流を電動化することができた。BEVトラックを製造するメーカー自身が複雑な物流を電動化する実例を示した、いわばリファレンスの電動物流フローとなる。
マルエルブの中継拠点であるヴィロンヴェを起点とすると、リヨン工場から運ばれてきたエンジンと車軸をブランヴィル工場に運び、ブランヴィルで大型キャブを積み込み、ヴィロンヴェに戻りトラクタとドライバーを交換する。
同様にヴィロンヴェ・オーセール、オーセール・マコンのループを通じて南下し、それぞれの拠点でバッテリーの充電やドライバーの休憩を行なう(充電ステーションについてはマルエルブが投資して整備している)。
マコンからブールカン=ブレス工場に運ばれた大型キャブはそこで荷降ろしされ、トラックはリヨン工場に向かう。リヨンで中型エンジンと車軸を積み込み、マコンへ。マコンから再びリレーによりループを北上し、ヴィロンヴェで全体のループが一周する。
各ステージはトラックの稼働時間を最大化するように設計されており、運転手の交換によりBEVトラックは1日に最大18時間稼働する。「乗り回し」への賛否はあるが、専属車とするより稼働率は高くなる。また、フランスを縦断する長距離輸送を4つの小さなループに区切ったことで、運転手は自宅の近くに留まることができる。ドライバーが毎日自宅に帰れるのは働き方の上でも利点だ。
ルノー・トラックスにとってトラックの製造に関する物流フローはクリティカルなシステムだが、ほぼ100%を電動化することができた。メーカーとしてBEVトラックの信頼性と成熟度を実証するとともに、年間で2869トンのCO2排出を削減するという。
【画像ギャラリー】ルノーが実現したBEVによる工場間のJIT物流と同社の「Eテック T」(6枚)画像ギャラリー








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