新型コロナウイルスの影響でなぜか全国各地で買い占めが止まらないトイレットペーパー。中国のマスク生産に原材料を使っているためマスクが不足るというデマに対して、日本家庭紙工業会がプレスリリースを出すまでの騒ぎになっている。
やっと3月も下旬になり、トイレットペーパーを店頭で見かける機会こそ増えてきた。しかし東京都心では入荷すればその日のうちに完売するという状況は続いている。
ベストカーのトラックマガジン『フルロード』編集部には現在トイレットペーパーを輸送しているドライバーさんからの声が届いた。トイレットペーパーは足りています。ドライバーの切実なお願いとはいったいなんだろうか?
【フルロードとは?】
フルロードはベストカーの正統派トラックマガジン。新型車紹介や、ビルダーの手掛ける唯一無二のボディまでを網羅するドライバーさんにも人気の雑誌です。 3月10日、6月10日、9月10日、12月10日の季刊で発売。定価1200円(税別)。
文/写真:フルロード編集部
■ 配送ドライバーの理絵さんが語る「買い占め」の困った余波
福岡県の運送会社で4トンのウイング車に乗っている理絵さんが、ふだん運んでいるのがトイレットペーパーだ。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、マスクと並んで今や世界的に品薄状態となっているトイレットペーパーだが、本当にパニックのようになって必死に買い求める必要があるのだろうか?
その流通を担うトラックドライバーの理絵さんに、実際の現場の状況を聞いた。
「今回の新型コロナウイルスの影響で、物流でとても深刻なのはマスク不足とトイレットペーパー不足ではないでしょうか。
マスクの方は専門外なのでよく分からないのですが、私がふだん運んでいるトイレットペーパーは、テレビやネットのニュースで伝えられている通り、在庫はたくさんあります。
ただ、配送がまったく追いついておらず、店頭まで届かない状態になっています。九州の方では本当に突然だったのですが、熊本県でトイレットペーパーが欠品になっているらしいという話を聞いた途端、熊本方面から大量の注文が入り、毎日のように熊本へ配送に行くようになりました。
しかも通常の配送にプラスして熊本からの大量の注文だったので、熊本で降ろして高速でバタバタと北九州の工場へ積みに戻り、福岡県内や近郊の県へともう1回、2回配送に行くような状態でした。
それが何日かすると九州だけではなく全国的にトイレットペーパー不足になってしまい、配送をしてもしても終わらない状態になり、しかも熊本もまだ落ち着いてない状態だったので何日も家に帰れなかったり、帰ってもお風呂だけですぐ出なければいけなかったり、トラックの中で寝ているような状況でした(汗)。
スタンドのシャワーはコロナウイルスの影響で借りられないところも多数あり、私の場合は積み込みをする工場で借りられるのですが、ふだん長距離でスタンドのシャワーを借りている人はたまらないだろうなぁ……と思ってしまいました。
1日3回、4回走るのはザラで、うちの会社のトイレットペーパーの専属のトラックは9台しかないのですが、一番ひどい時には、その台数に対して67台分の積込指示書が送られてきたそうです。これには本当に笑いしか出ませんでした。
■運び続けても終わりが見えないトイレットペーパー輸送
トイレットペーパーの輸送はトラックの台数が足りないのに、需要が大きくなりすぎているのが問題点だ。ドライバーの休みもグッと減っているという。
「運んでも運んでも追いつかず、運べない分は次の日に日延になり、そして翌日には新たな注文が追加された状態の指示書がまた送られて来る……の繰り返しで、怒濤のような毎日を送り、日曜日も交代で仕事。
これでもまだ運びきれていません。もう先が少しずつですが見えてはいるのですが……。私はこの仕事を20年以上していますが、大型連休の前よりも消費税増税の前よりも忙しく、今回が過去一番だと思います。
きっかけはSNSでの「トイレットペーパーが品薄になる」という一言で始まったとのことですが、真偽のあやしいたったその一言で世間はこんなに大騒ぎになりました。
我先に買い占めに走り、本当に必要な人の手に渡らなくなり、いつもは1パックしか買わない人が店頭の品薄状態を見て、次はいつ買えるのか分からなくなり、不安になって2パック買う。
そうすると店頭の在庫がまた品薄になるの繰り返しで、いつまでも注文が止まらない悪循環ですね。
工場には十分な在庫があります。でも、トラックが足りないんです。もう少ししたら店頭にも少しずつ商品が並んでくると思います。それまでは頑張ります。
なので、必要以上に買いだめするのは控えてもらいたいと思います。結局大変な思いをするのは末端の配送業者なんです。
この後にはきっとものすごい買い控えがあると思います。その時こそ本当に私達は死活問題なんです。安定した流通を望みます。どうか落ち着いてください」。
現在もトイレットペーパーの需要過多で流通業界はかなりの圧迫を感じているという。台数に限りがある以上、たくさん運んだからといっても会社の収入が増えるわけではない。
ドライバーへの負担も大きくなってしまい、事故やケガなどへ繋がる恐れもある。消費者ができることは必要な分だけ購入して、予備はグッと我慢すること。
輸送業界ではいまこの瞬間も、トイレットペーパーを運び続けるドライバーたちがいることをどこかで思い出していただけたらと思う。