トラックの解体のために工場を新設!? 大型車のパーツリサイクルに向けた取り組みが世界中で進展中

トラックの解体のために工場を新設!? 大型車のパーツリサイクルに向けた取り組みが世界中で進展中

 再生産やリサイクルなど、大型車の「サーキュラー・エコノミー」に向けた取り組みが世界各地で進められている。

 いすゞ自動車は、エンジン、トランスミッションなどの再生産品である「リマニ」ユニットによる「ギガ」トラックのメンテナンスリースを2022年10月から開始した。

 いっぽう欧州では、トラックの電動化を見越して、大型車用バッテリーの再利用に向けた取り組みが早くも模索され、中には製造のためではなく「解体」のために工場を新設するトラックメーカーもある。

 トラックの製造も、環境へのインパクトを低減し、天然資源への依存を減らす、持続可能な経営へ向けて歩み始めている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/いすゞ自動車・ Renault Trucks・ MAN Truck and Bus

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メーカー自身が大型トラックを「再生産」

 いすゞ自動車株式会社は、「リマニ」ユニットを活用した大型トラック「GIGA type-Re」のメンテナンスリースの取り扱いを10月より開始した。リマニとは「リマニファクチャリング」=再生産の略で、使用済み製品を回収した後、分解、部品交換などを経て新品同様の製品に再生産することを指している。

 この取り組みは、短期間で高稼働運行したリースアップ車に対し、いすゞのリマニ技術によって、再利用可能なエンジンやトランスミッション等を新品同等に機能回復させ、再生した車両(リマニユニット車)を、同じユーザーに再度メンテナンスリースで提供するものだ。

 機能回復させるにあたっては、車両のコンディションを把握するために、高度純正整備「PREISM」を活用し、交換が必要な部品のデータを検出する。

 いすゞは、2050年までに製品のライフサイクル全体で温室効果ガス(GHG)ゼロを目指すと共に、廃棄物・廃棄車両の再資源化率100%に向け、「循環経済」(サーキュラー・エコノミー)の実現のための活動を推進している。

 リマニユニット車は、新車と異なり再利用する部品が多いため、資源の循環活用が可能となるほか、CO2の排出量を削減し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。

 リマニユニットの「GIGA type-Re」と新車1台当たりの製造時のCO2排出量を比較すると、約76tの削減効果がある(25年間で100万km走行した大型トラック「ギガ」にて算出)。

 また、メーカーが自ら再生産することで新車同等の耐久性・信頼性を確保し、安心稼働を支える。納期は最短で2カ月ほどとなっており、トラックの納期が長期化するなか、短納期でトラックを確保できるというメリットもありそうだ。

海外でも進むトラックの循環経済

トラックの解体のために工場を新設!? 大型車のパーツリサイクルに向けた取り組みが世界中で進展中
ルノー・トラックスは再生(Regenerate)・再利用(Repurpose)・再資源化(Recycle)の「3R」を積極的に進めている

 大型車は部品も大きく、廃棄に伴うコストやCO2排出量も多い。このため、海外のメーカーでも循環経済実現のための取組が進められている。

 例えばドイツのマン(MAN)は、今後10~15年で大量廃棄が予想される大型車用のバッテリーについて有効利用するための戦略をあらかじめ模索している。

 マンが考えているのは、製品寿命(一次ライフ)が尽きたバッテリーをメーカーが再生産して再び車両用に使用するか、あるいは定置式のバッテリーとして蓄電に利用することだ。第2の製品寿命も尽きたバッテリーはリサイクルによって原材料を取り出し、新品の生産に活用する。

 また、世界のトラックメーカーの中でも先進的な取り組みをしているのが、フランスのルノー・トラックスだ。サーキュラー・エコノミーへ積極的な投資を行なってきた同社は、今年、トラックの「解体工場」の新設を発表している。

 再生・再利用・再資源化の三つをさらに推し進め、既にライフサイクルの終わりを迎えたトラック・スペアパーツもリサイクルを行なうという計画だ。

 ルノー・トラックスの発表は、リヨン-ベニシューの製造施設に面積3000平方メートルの専用工場を作るというもの。可能な限り配送センターに近い立地とし、走行距離の長い中古トラックと、再利用の可能性を秘めた中古パーツを取り扱う。

 ルノー・トラックスの車両とコンポーネントは、150万kmの走行距離に耐えるように設計されているが、寿命を終えると中古パーツ工場へ入り、解体される。工場のスタッフは事前にリユース可能と判断された部品を取り外していく。例えば、エンジン、ギアボックス、キャブ、燃料タンク、バンパー、デフレクターなどだ。

 リユース用に部品を取り外したら、その他のコンポーネントはリサイクルに回す。例えばサイドレール(シャシーのフレーム)は切断して近隣の工場に送り、再資源化して新車の製造に使う。

 リユース目的のコンポーネントは、その後、検査、洗浄、トレーサビリティのためのラベル付けが行なわれ、新品のスペアパーツとともに、中古スペアパーツとしてルノートラックスのパーツ倉庫に送られることになる。

 中古のスペアパーツは「Used Parts by Renault Trucks」ラベルで販売され、新品のスペアパーツと同様、ディーラーやオンラインストアで購入できる。中古品だがもちろんメーカー純正品として補償もつくし、新品と比べると大幅にコストは低くなる。

 生産を終了している古いモデルについては、リサイクル企業との協力を続ける。こうした提案は、カーボンニュートラルに向けた取り組みであるとともに、業界全体に影響しているリチウムなど一部のコンポーネント不足や原材料の調達といった課題への解決策でもある。

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