その速度で本当に大丈夫? カーブでのトラックの安全速度を考える

東名左右ルートの300R

 次に、カーブでの横Gについてである。トラックでは一般に、加減速による前後方向の加速度より、カーブによる横方向の加速度のほうが小さい。そのため、長方形の荷物の積み付けは長辺を前後方向にして積むのが基本。

 普段は小さい横Gだが、強い横Gが加わった際には、荷崩れ、スリップ、最悪の場合は横転事故につながる。

 ドライブレコーダーが「急ブレーキ」や「急カーブ」を検知するのは一般的に0.3Gである(もちろん設定により変えられる)。私の意見では、高い輸送品質を確保できる横Gは0.17G以下である。いわゆるおとなしい走りだ。

 東名下りの大井松田-御殿場間の都夫良野トンネルを抜け、静岡県小山町に入った所に300Rのカーブが左右ルートそれぞれ3回出て来る。この300Rを制限速度の80km/hで走るときの横Gが0.17Gなのである。

 300Rは、新東名の最小曲率半径3000R、設計速度120km/hなどとは大違いで、高速道路の本線上では最も急な部類のカーブである。このカーブを雨天でも安定して走れる速度は経験上、制限速度と全く同じ80km/hである。

 このときの遠心加速度を公式 a = v^2 / r[単位:N/s^2]で求めると、0.17Gとなる。もし、リミッター上限の90km/hで走れば、遠心力は速度の2乗に比例するため、速度は12%増しでも、遠心加速度は26%増しの0.21Gとなり、体感的にはかなりの急カーブとなる。

名阪国道は両端に急カーブ

 「無料の高速道路」「もっとも事故が多い高速道路」とも呼ばれる名阪国道は、両端の山越えの峠道が、真ん中の伊賀盆地の比較的平坦な道をサンドする形になっている。

 亀山側の「伊賀越え」(加太トンネル周辺)は、かの徳川家康が「本能寺の変」を知って隠密に大阪・四條畷付近から三河国に逃げ帰る際に、野盗に襲われる心配から「うんこを漏らしながら逃げた」と伝えられる程の難所である。

 その亀山側に1か所(越川大橋付近200R)、天理側に2か所(通称Ωオメガカーブ約200R、天理東側最終ヘアピン150R)の急カーブがある。この区間の制限速度は60km/hであるが、高速道路並みに飛ばすクルマが多いため、事故も多い。

 地元生活車両との速度差が大きいことも危険性を増大させている。200Rのカーブをどうにか安全に通行できる速度の上限は、体感的に65km/hである。この時の横Gは奇しくも0.17Gなのである。

 また、これらの区間は6%と勾配もきつい。登坂時より降坂時の方が制御はしにくい。急カーブの場所を覚えておくと同時に、カーブ半径や勾配の表示が出たら、何km/hなら安全に走れるか判断できることが、プロドライバーにとって必要である。

 0.17Gとは具体的にどの程度の加速度かというと、キャビン内の平面に置いたペットボトルが倒れない運転だ。500mlのペットボトル(未開封)なら0.23G以上、900mlなら0.17G以上の横方向の加速度で倒れる。

 また、キャビンの地上高は高く、路面の段差が影響しやすいことや、旋回中に舵角を切り増す場合もあるため、瞬間的に横Gが変動することもある。

 なお、カーブにはバンク角がついているため、旋回中は車両の真下方向への力が増し、横Gは軽減されるが、バンク角は通常5%以下と微量であるため横Gの軽減はほぼ無視できる。

ジャンクションにも注意

 この他にも、今は本当に多くのジャンクションができたが、ジャンクションのカーブはほとんど要注意である。

 特に、線形の良い新名神が全線開通するまでの中継ぎ的道路である金勝山トンネル~草津JCTや高槻JCTなどは、これまで素晴らしい直線の道で来ているのに、突然、急勾配、急カーブになるから、標識が出ていても危険である。

 また、普段は山陽道を通行するトラックが多いためあまり走ることのない中国道(兵庫県~山口県)には、高速道路上では最も厳しい勾配6%、250Rのカーブも随所にあり、60km/h制限の区間もある。走行には注意が必要だ。

 かつて、スピードリミッターがなく大型トラックが120km/hで走っていた時代には、東京-広島を8時間で走りきる「スピードの匠」もいた。しかし、今はそういう時代ではなく、輸送品質が問われる時代だ。

 プロドライバーには、盲目的に飛ばすのではなく、早く着ければ良いのでもなく、絶対に事故を起こさない安定した走りが要求される。

 実は、デジタコで点数が出ることは、ドライバーにとっても、自分の運転の加減速Gや横Gを知ることができ、より高度な運転技術のバロメーターとなっている。プロドライバーとして全国の道路の危険なポイントを熟知することが重要だと思う。

【画像ギャラリー】カーブごとに考える必要があるトラックの安全速度(2枚)画像ギャラリー

最新号

【特集】いすゞ新型フォワード 16年ぶりのフルチェンジで7代目へ! フルロードvol.52 本日(3/11)発売!!

【特集】いすゞ新型フォワード 16年ぶりのフルチェンジで7代目へ! フルロードvol.52 本日(3/11)発売!!

 自動車雑誌ナンバーワンの「ベストカー」が自信をもってお送りする本格派のトラックマガジン!  16年…