ドイツのMANトラック&バスが今年から量産を開始しているBEV大型トラック「eTGX」は、顧客による累計走行距離が500万kmを超え、CO2の排出削減量は約3600トンとなった。
併せて公開された平均電費は「90kWh / 100km」だった。日本の電気料金・軽油価格になおしても「電費」効率はディーゼル車を上回り、顧客ベースの実運用でもBEVのコストメリットが実証されたという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus
MANの電気トラックが早くも走行500万km
ドイツの商用車大手、MANトラック&バスは2025年9月4日、2025年初頭からローンチカスタマーでの運用が始まっている同社のバッテリーEV(BEV)大型トラック「eTGX」の累計走行距離が500万kmを超えたことを発表した。
併せてeTGXのこれまでの「電費」データや、ディーゼル車を置き換えた場合のCO2削減量なども公開している。
これまでに欧州の大手物流サービスプロバイダーのDBシェンカー、ダッシャー、デューベンベック、ドレクスルマイアーなど様々な企業がeTGXを導入しており、幅広い輸送タスクで実用的なトラックになっているという。
そして、平均の電力消費量(電費)は100km当たり90kWhだった。欧州と日本では制度が異なるので単純な比較は難しいが、国内の家庭用電気料金は1kWh当たり30~45円。同車を日本で走らせた場合、計算上は100kmの走行に2700~4050円かかることになる。
MANによると最新の大型ディーゼル車(トラクタ)の燃費は100km当たり27リットル(=3.7km/L)に達する。国内の軽油の平均販売価格は過去1年間に151円~166円で推移しており、これも単純換算すると100km当たりの燃料代が4077~4482円という計算だ。
この電気代と燃料代を比較すると、電動化により最大で約4割のコスト削減になる。総コストの捉え方は運送会社によって異なるが、ランニングコストの安さは実運用でも実証されたといってよさそうだ。
なお、充電にグリーン電力のみを使ったと仮定すると、大規模量産化を前にした200台のトラックだけで既に3600トンのCO2排出量を削減したことになる。長距離トラックが生涯で120万kmを走行することを考えると、これらのトラックは製品寿命全体で17万2000トンのCO2を削減できる。これは人口3万2000人のドイツの街が年間に排出するCO2の量と同じだという。
MANトラック&バスのセールス&カスタマーソリューション担当役員のフリードリヒ・バウマン氏は次のように話している。
「お客様による500万kmの走行は、MANのBEVトラックの実用性の高さを示しています。自動車部品から食品まであらゆる輸送において、高い汎用性と評価を得ています。量産化によってこの強みをさらに拡大し、持続可能な道路貨物輸送のための最適なソリューションを提供してまいります」。
BEV大型トラックの導入は欧州で着実に増加
少数の顧客への提供に続けて、ミュンヘンでMANの大型BEVトラックである「eTGX」と「eTGS」の量産が開始されたのは2025年6月だった。中・長距離輸送から建設・公共部門などでの使用に適した車両だといい、MANはディーゼル車とBEVトラックを工場の同じ生産ラインで量産する混合生産ラインを整備した。
これにより1日当たり100台の車両を生産できるといい、2025年末までのBEVトラックの受注台数として1000台を目標としている。
量産開始直後だけで800台を受注しており、2025年上半期のBEVトラックは前年同期比で238%という急成長だった。目覚ましい需要ではあるがベース水準(前年)の低さも影響しているので、今後も需要が継続するか注視する必要がある。
MANのBEVトラックを導入する会社は欧州全域で着実に増えている。ドイツ有数の木材卸売会社のベーレンスでは既に5万kmを走行した。同社では電動フォークリフトでの荷扱いに対応するスワップボディを架装し、一部は太陽光発電で充電している。
フランスで初めて導入したのは食品輸送を手掛けるジャッキー・ペレノで100台以上を発注している。オランダでは輸送サービスプロバイダーのコルネリッセンなどが都市部・地場の配送に活用している。
他にポーランド、ポルトガル、ノルウェー、デンマークなど欧州各国の様々な輸送にMANのBEVトラックが導入された。最近では地方自治体など公共部門でも大型トラックの電動化への関心が高まっており、MANはオーストリアで12市町村に最大45台の車両を供給する包括契約を締結したそうだ。
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