BMWにイヴェコの燃料電池トラック! 長距離輸送で「水素駆動」の優位性を実証へ

BMWにイヴェコの燃料電池トラック! 長距離輸送で「水素駆動」の優位性を実証へ

 イヴェコの燃料電池大型トラック「S-eウェイ・フューエル・セル」2台がBMWに届けられた。

 イヴェコとBMWは欧州の水素モビリティプロジェクト「H2Haul」のパートナーで、2台のトラックは水素燃料がゼロ排出&ゼロカーボン輸送の実用的なソリューションになり得ることを証明するために活用される。

 大型車の脱炭素化に向けては純電動と水素技術の2つが有望とされるが、イヴェコは一つの技術に依存しない技術中立なアプローチを採用している。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/IVECO SpA

イヴェコ「S-eウェイFC」がBMWに

BMWにイヴェコの燃料電池トラック! 長距離輸送で「水素駆動」の優位性を実証へ
BMWの輸送に用いられるイヴェコの「S-eウェイ フューエル・セル」

 イタリアの大手商用車メーカー・イヴェコは2025年2月20日、「H2Haul」プロジェクトのパートナーであるBMWに「イヴェコ・S-eウェイ フューエル・セル」(以下「S-eウェイFC」)大型トラックを納車した。

 イヴェコによる燃料電池EV(FCEV)大型トラックの納車は今回が初めてとみられる。

 同プロジェクトは欧州連合のクリーン水素パートナーシップなどが出資するもので、水素トラックによるゼロ排出ソリューションが実現可能であり、また高い信頼性を持っていることを証明することを目的にしている。

 そのために実際のミッションにおいて様々な実証運行を行なうことで、欧州の輸送ニーズに適合できることを証明するといい、今回納車されたS-eウェイFC2台を活用する。

 これに合わせてTEALモビリティ社がライプツィヒとホルマースドルフに水素充填ステーションを開設し、水素の供給とそれによる商用輸送の確立に向けて重要な一歩を踏み出した。2台のFCEVトラックは、充填ステーションで燃料を補給しつつ、ニュルンベルク・ライプツィヒ間でBMWの自動車部品を輸送する。

 イヴェコで代替駆動系事業の開発責任者を務めるジャンドメニコ・フィオレッティ氏は次のように話している。

「弊社の『S-eウェイFC』の最初の2台をBMWに納車しました。これは、水素による長距離輸送が実用的でスケーラブルであることを証明するための大きな前進です。私たちは欧州の輸送のゼロエミッションに向けた道を切り開いたことを誇りに思います。

 この成果は、自動車メーカー、エネルギーおよび技術プロバイダー、荷主、運送事業者、そして関係する各機関が水素による商用輸送を実現するために力強く団結していることを示しています」。

 なお、イヴェコは米国の新興トラックメーカーのニコラと提携しており、同社はイヴェコ「S-ウェイ」大型トラックをベースにした「トレBEV」と「トレFCEV」を開発している。両社の合弁だった欧州事業はイヴェコが買い取り、現在はイヴェコ単独で展開しているが、電動の「S-eウェイ」は前者、燃料電池の「S-eウェイFC」は後者の欧州仕様だ。

 先日、そのニコラが破産を申請し、提携するイヴェコへの影響も懸念された。BMWへの納車発表は、そうした懸念を払拭する狙いもありそうだ。

水素の優位性を示すショーケース

BMWにイヴェコの燃料電池トラック! 長距離輸送で「水素駆動」の優位性を実証へ
納車に合わせて水素ステーションも2か所に開設された

 S-eウェイFCの航続距離は最大800kmに達し、燃料の充填は20分以下で行なえる。これは現状のバッテリーEVトラックでは実現困難なもので、加えて燃料となる水素の重さも(比重が小さいので)わずか70kgと軽量で、積載量への影響が少ない。燃料には700 bar 圧力で保存する気体水素を利用している。

 この航続距離と積載量からFCEVトラックは長距離輸送のゼロエミッションを実現する上で、真のゲームチェンジャーになることが期待される。

 イヴェコのH2Haulプロジェクトへの参加は、同社が脱炭素化に向けて様々なエネルギーを活用するというアプローチの一環だといい、イヴェコは特定のニーズに最適なソリューションを提供するため多くの代替パワートレーンを開発している。

 中でも水素は、長距離輸送など排出削減が困難な分野で脱炭素化を進めるために重要な要素だ。

 特定の技術に依存しない「技術中立」というアプローチは、イヴェコのIAA2024の展示からも明らかだ。たとえばFPTインダストリアル(イヴェコの子会社で欧州最大のエンジンメーカー)の13L級水素燃焼エンジンや、水素レンジエクステンダーによるシリーズハイブリッドなど、同社は大型車用の水素エコシステムの模索を続けている。

 今回納車された「S-eウェイFC」2台は、イヴェコが欧州各国(ドイツ、フランス、スイス)に戦略的に配備を進めている12台の水素燃料大型トラックの一部となる。

 BMWが主催したイベントにはドイツの連邦デジタル交通省の代表など、多くの関係者が招待され、自動車の製造から長距離輸送まで、どのように水素技術が統合されていくのか、また輸送における水素車両の重要性などが紹介された。

 こうした包括的な水素技術に関するデモンストレーションは、物流の脱炭素化と、要件が厳しい長距離輸送において水素駆動のモビリティの導入を加速するために業界が共同で取り組んでいることを強調するものになるという。

【画像ギャラリー】BMWに納車されたイヴェコ・S-eウェイFC(3枚)画像ギャラリー

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