バッテリーEVトラックにガソリン発電機!? スカニアとDHLが「レンジエクステンダーEV」共同開発

バッテリーEVトラックにガソリン発電機!? スカニアとDHLが「レンジエクステンダーEV」共同開発

 DHLとスカニアは、共同開発したレンジエクステンダーEVトラックを公開した。スカニアのBEVトラックからバッテリーパックを減らす代わりに、ガソリン発電機を搭載したものだ。

 車両の電動化を推進してきた欧州は内燃エンジンの禁止を含めBEVによる「100%排出削減」を追求してきたが、両社は英語圏のことわざ「完璧は善の敵」を引用して、暫定的だが実用的な「80%排出削減」ソリューションを承認するよう当局に呼び掛けている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Scania CV AB・Deutsche Post AG

スカニアとDHLがレンジエクステンダーEVトラックを開発

バッテリーEVトラックにガソリン発電機!? スカニアとDHLが「レンジエクステンダーEV」共同開発
スカニアとDHLが共同開発した「航続距離延伸型EV」(EREV)

 2025年2月20日、世界的な輸送プロバイダーであるDHLグループと、スウェーデンの大手商用車メーカーのスカニアは、両社が共同開発したトラックを公開した。

 といっても全く新しい車両ではなく、既存のバッテリーEVにレンジエクステンダー(航続距離延長装置)としてガソリン発電機を搭載したトラックで、一般に「レンジエクステンダーEV」と呼ばれるハイブリッド車両だ。

 持続可能な輸送を実現するには純電動トラックが理想だが、そのための「シフト」を加速する必要があり、充電施設の不足やピーク電力への対応、大型車による電力網への負担、電気料金(スポット価格)の高騰などのハードルを超えなければならない。

 スカニアとDHLが「航続距離延伸型EV」(EREV)を開発したのは、これらの課題に対処するためだといい、EREVは「100%再生可能エネルギー」ではないが、DHLが「80~90%」を再生可能電力で運行する。

 このトラックはドイツの郵便・小包配達に2月から投入され、ベルリン-ハンブルク間の日常業務に使用することでパフォーマンスを試験し、その後、DHLが追加の車両を導入する予定となっている。

 郵便配達などの用途では、BEVトラックで最大構成のバッテリーパックを必ずしも必要としない。そのうちの1つの代わりに発電機を搭載することで航続距離は650~800kmに達する。従来のガソリンスタンドが利用できるので航続距離の心配がなくなるいっぽう、ほとんどの配達は電気駆動のみで完了する。同じ積載量の場合、スカニアの最新型BEVトラックによる航続距離は550kmだ。

「100%」の理想より「80%」の実用的ソリューション

 BEVという「理想」を追求するより、暫定的だが「実用的なソリューション」を試験することについて、DHLグループのCEOを務めるトビアス・マイヤー氏は次のように述べている。

「再生可能電力、充電網とインフラが利用可能になり、BEVトラックがそれに依存できるほど堅牢になるまで、長い時間がかかるでしょう。その日が来るのをただ待つ代わりに、DHLとスカニアはCO2排出量を80%削減可能な実用的ソリューション開発しています。

 EREVは(BEVが普及するまでの)暫定的な車両ですが、短期的に温室効果ガスの排出削減に貢献できる優れたソリューションです。EUは排出削減スキームにこうした取り組みを反映する必要があると考えています」。

 いっぽう、スカニアのCEOを務めるクリスチャン・レビン氏も「輸送の未来は電気だと思っていますが、『完璧は善の敵』であってはなりません。効果的な気候変動対策には、政府がこのようなソリューションを受け入れる必要があります」と述べ、EUおよび各国の政策担当者に、車両の実際の排出量を認識しそれに比例した道路利用料金を徴収するなど、こうしたコンセプトを補助するように呼び掛けている。

 EREVはスカニアの「23G」トラック(汎用の『G』キャブに230kW電動モーターを搭載するBEVトラック)がベースのようだ。全長10.5メートル、(連結)総重量40トン、出力230kW(連続)/295kW(ピーク)のEVに、416kWhのバッテリーと、120kW出力のガソリン発電機を搭載している。

 最初はガソリン発電機を使うが、のちにディーゼル/HVO燃料(再生可能ディーゼルの「水素化植物油」)で駆動する発電機を使うことで、航続距離を800kmまで伸ばす予定。発電機の使用を制限するソフトウェアを搭載し、CO2排出量を一定の水準に制限することができる。

 最高速度は89km/hで、スワップボディに約1000個の小包を搭載可能。またトレーラをけん引することもできる。

【画像ギャラリー】スカニアとDHLのレンジエクステンダーEVトラック(2枚)画像ギャラリー

最新号

【解説&試乗】日野プロフィア2024年モデル フルロードvol.55 本日(12/10)発売!!

【解説&試乗】日野プロフィア2024年モデル フルロードvol.55 本日(12/10)発売!!

今号では、昨年2月中旬から出荷を再開した日野プロフィアの2024年モデルに試乗。燃費性能と安全性能もアップし、新設計AMTで走りも別モノに進化した新モデルの実力に迫ります。また、「だれでもトラック」いすゞエルフミオEVの公道試乗を実施。AT限定普通免許で運転できるEVトラックの魅力をお伝えします。大好評の「働くクルマの大図鑑」は、飲み物を運ぶその究極のカタチ「ボトルカー」を特集しました。ボトルカーの構造から製造工場のレポート、知られざる歴史、さらにはeキャンターのボトルカーの試乗レポートまで盛りだくさんの内容になっています。