2階建てバスなどで知られるイギリスの老舗バスメーカーが新ブランドを創設し、BEVトラック事業に参入した。中国企業との提携でZEV商用車のグローバルリーダーを目指すという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Rightech・Wrightbus
ライトバスが新ブランド「ライテック」でトラック市場に
イギリス(北アイルランド)の自動車メーカーで、ロンドン名物の2階建てバスや低床バスの開発で知られるライトバスは、2025年1月29日に新ブランドの創設を発表した。
同社はゼロエミッション車(ZEV)のパイオニアだが、新ブランドの「ライテック」もZEV専門のブランドとみられる。発表されたのはバッテリーEV(BEV)の4モデルで、そのうち2モデルはバスではなくトラックだった。商用車の脱炭素を契機にトラック・バスでグローバルリーダーを目指している。
トラックは車両総重量7.5トンの小型トラッククラスの車両で、右ハンドルモデルと左ハンドルモデル、イギリス仕様と欧州仕様がある。バスは全長6メートルと9メートル級の小~中型モデルだ。
新ブランドで販売されるこれらの車両は、イギリスとアイルランド、および欧州市場が対象で、対象地域では既に受注を獲得しているという。
ライトバスは1946年創業の老舗バスメーカーで、オープントップバスなどが日本にも導入されている。2019年に破産を申請したが、その後、ZEV事業で急速に持ち直し、今や欧州で最も成長しているバスメーカーとなっている。
車両の電動化は乗用車とトラックではやや足踏みしているが、バスでは好調が続いている。特にイギリスは、ドイツでの補助金の停止などが影響し、欧州最大のZEVバス市場となり、英国自動車工業会(SMMT)が2025年2月に発表した統計によると、バス登録台数の43.9%がZEVだった。
記録的な販売台数となっているライトバスは、協力会社に増産を呼び掛けているそうで、今後2年間で新たに1000人を雇用するとともに、生産台数をそれぞれ200台上乗せし、2025年は1200台、2026年は1400台を製造する計画だという。
新ブランドの背後に中国メーカー?
ライトバスは破産の直後に世界初の2階建て燃料電池バスを試作しており、BEVと燃料電池電気自動車(FCEV)の両方でゼロエミッション化を目指す戦略を採用している。
同社のCEO、ジャン=マルク・ゲールズ氏はライトバスの戦略と新ブランドについて、次のようにコメントしている。
「弊社はどこよりも早く『ゼロ・エミッション』という旗を掲げてきました。世界で初めて水素で走る2階建てバスを製造し、今や1700台のBEVバスが道路を走っています。
サプライヤーの43%は英国で、国内だけで2200人を直接雇用しています。サプライチェーン全体ではさらに6600人の雇用を生み出しており、雇用の拡大は今後も続くでしょう。ただ、モビリティビジネスをグローバルに展開するには、製品ポートフォリオをさらに拡大する必要があります。
私たちの工場は大型バスと2階建てバスの生産を増やし続けていますが、(新ブランドで)ゼロエミッションの中型バスとトラックの需要を満たすことも理にかなっています。一番早く商用車の脱炭素を進める手段が電動化だからです」。
新ブランド「ライテック」のトラックとバスは、中国メーカー2社との戦略的枠組み協定がその基礎にあるという。
プレスリリースでは直接言及されていないが、バスは大型バスで中国最大手級の金龍客車(Kinglong)、トラックは同じく小型トラック大手の江淮汽車(JAC)の車両がベースとなっているようだ。
中国メーカーから供給を受けるいっぽうでライトバスは全ての要素に独自の基準を設け、試験、認証、設計、検証のためエンジニアが3万時間を費やして調整を行なったという。
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