ヤマトグループと富士通は業界の垣根を越えた物流効率化に向け、あらゆる荷主企業・物流事業者に共同輸配送のオープンプラットフォームを活用したサービスを提供開始する。
システムは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの「物流情報標準ガイドライン」に準拠しており、企業間で定義の異なるデータの連携が容易になった。企業の枠組みを超えて、「標準パレット」単位で物流の効率化を目指している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
画像/ヤマトホールディングス
ヤマトと富士通が「共同輸配送」サービス提供
ヤマトホールディングスの傘下で、共同輸配送により物流の標準化・効率化を目指すSustainable Shared Transport株式会社(以下、SST)と富士通株式会社は、2025年2月1日から、荷主企業・物流事業者向けの共同輸配送システムの稼働を開始する。
また、SSTは同日よりオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービス「SST便」の提供を開始する。
ドライバー不足や物流の「2024年問題」などで物流の持続可能性に注目が集まるなか、持続可能なサプライチェーンの構築に向け、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する会社として、2024年5月21日にSSTが設立された。
同社は標準パレット輸送(リアル)と標準化された商流・物流情報の連携(デジタル)によるオープンプラットフォームの提供準備を進めている。その「SST便」は、幹線輸送をベースにあらゆる荷主企業と物流事業者をマッチングするオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービスだ。
いっぽう富士通は、「デジタル社会の発展」への取り組み項目として「責任あるサプライチェーンの推進」を掲げ、物流課題の解決を極めて重要なテーマに位置づけている。
そこで、荷主企業として「SST便」を活用するとともに、SSTと共同でサプライチェーンに関わるデータ連携基盤を構築した。また、2025年2月1日に、富士通がSSTに5,000万円を出資する。
共同輸配送を支えるシステムおよびオープンプラットフォーム
国内の輸送力不足や気候変動への対応は社会課題となっている。物流の効率化と、物流を担う事業者の職場環境を魅力のあるものにしていくことが、荷主を含めた事業者に迫られている。
ただ、一部の荷主や物流事業者のみでの課題解決には限界があり、ヤマトグループは企業の垣根を超えた物流効率化を進めるためSSTを設立し、富士通とともに企業の枠組みを超えてデータを連携する基盤システムの構築を進めてきた。
その特徴は次のようなものだ。
荷主企業と物流事業者の情報マッチングによる最適な輸配送計画の作成
富士通の「Fujitsu Unified Logistics」によるデータ基盤を活用しており、荷主企業の出荷計画や梱包の状態(荷姿)、荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画をもとに、最適な輸配送計画を作成する。
荷主企業は共同輸配送のパートナーを自ら探すことなく共同輸配送に取り組むことができるだけでなく、同一区間でも複数の時間帯・複数の輸送手段の中から標準パレットスペース単位で最適な輸送方法を選択できるため、効率的な輸送を実現する。
物流事業者は、復路の空車走行の減少(帰り荷の確保)などによる積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減や処遇改善を図ることが可能となる。
「物流情報標準ガイドライン」に準拠したデータ連携による意思決定の迅速化と企業間の協力促進
このプラットフォームは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期 スマート物流サービス」プロジェクトにより策定された「物流情報標準ガイドライン」に準拠しているため、業種・企業間で定義の異なるデータの連携が容易になった。
これにより、荷主企業や物流事業者は運送手段やドライバー配置計画など輸配送に関する意思決定を迅速化できるとともに、物流効率化に向けた企業間の協力を促進する。
ブロックチェーンによる安全なデータ連携の実現
富士通の保有するブロックチェーンなどの技術やサイバーセキュリティの知見を活用することで、外部からの閲覧を防止します。また、データ変更のログを取ることにより第三者からの改ざんに対して検知・対応・復旧を可能とし、業種や企業を跨ぐデータ連携において、セキュリティが担保された安全なデータ連携を実現する。
2月のサービス提供開始時点で、SSTは宮城県から福岡県間において1日16便を運航し、標準パレットスペース単位で利用できる「定時運行」「中継輸送」「混載」による幹線輸送を提供する。また、地域の物流事業者と連携し、要望に応じた「域内配送」を合わせて提供する。提供区間等は順次拡大する予定だ。
ヤマトグループは法人顧客170万社と物流事業者3500社とのパートナーシップ、輸配送オペレーションのノウハウを持っている。富士通の製造・物流分野の業務知見やシステム構築のノウハウと組み合わせることで、業界の垣根を越えた持続可能なサプライチェーンの実現を目指すとしている。
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