山陽電鉄で起きたキャリアカーの踏切事故を検証する その2
安全対策はいかに
荒井駅の踏切は、高砂市の広大な工業団地(三菱重工、神戸製鋼、サントリーなどが立地)の出入口であり、交通量も多い。元来、非常に危険な踏切といえる。前述のように、遮断棒が折られる事故が何度も発生している。トラックの安全や労災の講習でよく言われる「ヒヤリ・ハット」や「ハインリッヒの法則」からすれば、これまで何も対策が取られなかったことが重大なミスだ。ちなみにハインリッヒの法則とは、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというものだ。
ではどのような対策を取ればよいのだろうか? 線路を高架にすれば問題は一挙に解決しそうだが、莫大な費用がかかる。線路をすべて改修するよりは、道路の側に工業団地の出入り口となる陸橋を建設する方が現実的だろう。もちろんその際、踏切は4トン車以上(おおむね全長6.5m以上)の車両は通行禁止にすればよい。
だが、地元高砂市の運送関係者に聞いてみると、「陸橋はすでにあります」という。「国道250号線から加古川市内で一旦陸橋を越え、橋を渡って高砂側に入ってくることになる。大手工場はここを指定ルートにしていますので、大型車両が踏切を通ることはほとんどありません。ただ、西側には出入り口がないので混み合います」とのこと。グーグルの地図を見てみると確かに陸橋から入って来るルートはあるが、途中の道が細いように見えてとても大型トラックは通れない、普通に考えれば荒井駅の踏切から入ってくるのが一番素直なルートに思える。
工業団地には、地元車両ばかりではなく、地方から来るトラックも多いはずだ。今回の事故を起こしたトラックも大阪の車両で、ここを通るのは初めてだったようだ。間違って危ない道路に入らないために、「国道250号線⇒工業団地」の案内標識を充実することが重要なのではないか。事故防止は、案外ちょっとしたことで出来るのかも知れない。
ドラレコ普及で事故の様子明らかに
事故の様子は、押収されたドライブレコーダー(ドラレコ)から明らかになるかも知れない。これもドラレコ普及のお陰といえる。しかし、機種によっては踏切に入った時点の映像が残っていない可能性もある。ドラレコは「イベント」(事故や強い衝撃)があった時点の前後数十秒の映像を残すようになっているが、機種によって前後15秒や30秒などの録画時間の差がある。最近のドラレコでは、「イベント」映像に加え常時録画し、古い映像の上に新しい映像を自動で上書きするようになっているので、最新の数時間の映像は残るようになっている。また、前方の映像と運転席の様子を写す2カメラで、価格も1万円程度からと非常に手に入れやすくなっている。 (この項 了)
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