追想記(並走車22)
漫然運転の落とし穴は、意外にも安全運転にあるというのは、今では私の持論になっています。スピードを上げて走っている時は、それなりの注意を払っているが、安全運転をしている時は前の車にスピードを合わせて走ることが多くなり、次第に注意力が低下してしまう。いわば現在の日本の平和ボケと言われる現象に似ているかもしれません。つまり、緊張感のない運転と言えます。
そんな時に、横に並びかけられると、つい釣られてしまうという事態が生じてしまいます。
釣られる行為、また釣ってしまう行為は、既に今まで書いてきた通りなのですが、もう一度おさらいです。
釣られる側の漫然運転。スピード差が少ない。前方に車がいない。この三点が主な原因です。もちろん、加速性能の差などがありますが、それが無くても釣られます。
私も釣る側、そして、釣られる側の経験と両方あります。高速で、トラックがいつの間にか横に来ていて並走している。その時、スピードを確認すると本来走っているはずのスピードよりも上がっていた。「あれ、俺としたことが追い越すトラックの邪魔をしていた」と、慌ててアックセルペダルから足を外した経験は数多くあります。(この場合、うっかりブレーキを踏めないのは、ベテランのドライバーならお分かり頂けると思います)
そして、一般道でも同じで、乗用車で走っている時、また、トラックで走っている時も同様です。その中で、今でもはっきりと覚えている経験を述べます。その時は、私は軽自動車を運転していました。場所は国道307号線です。この国道は、大阪の国道一号線の「くらわんか舟」の付近から始まり、福井県まで通じている国道です。国道一号と八号線をほぼ並行して走っているので、東北、北陸方面に行くのによく使いました。
部分的には狭く、大型トラックでは部分的には走れても、全線走るのは無理でしょう。ですが、ご存知の方も多いと思いますが、この道路、下道を走るのには4トン車に限り有効で、特に渋滞時には私は重宝したものです。
その時の場所は信楽と貴生川の間で信楽を抜け山道に差し掛かったところでした。道路は曲がりくねっている片道一車線なので並走など危険な場所です。そこで、私の後ろに4トン車がつけているのに気が付きました。当然、追い越される覚悟はしていましたし、その時、釣られないように注意もしていたのです。そうです、その時はしっかりそれを認識していたのです。ですが、曲がりくねった山道ですので、トラックも追い越すタイミングが難しかったのでしょう。私も譲るべき広い場所が見当たらず、そのまま走っていました。
その間の空いたタイミングが、私の注意力を次第に鈍らせていたのです。
しばらくして、追い越されるという意識が頭の中から遠ざかっていました。トラックが横に並んできた時、初めて自分が追い越されているのに気が付きました。そして、あろうことかこんな山道の見通しの悪い場所で、そのトラックと並走状態だったのです。メーターを見ると、明らかに10km/h上がっていました。その時は、慌ててブレーキでスピードを落としました。後ろに車が付いていないのを確認できたからです。
当時、私は釣られる乗用車の多いことに憤慨していました。当然のことで、自分もその点には注意を払っていたのです。それでも、自分自身がそんなことをしてしまう。幸い、対向車もなく無事にすみました。追い越した後そのトラックは、ウインカーを一回だけ点滅させ礼をして走り去りました。
このように釣られたり釣る行為は、悪意やワザとではなく、無意識の行為であることは言うまでもないことです。しかし、それが重大な事故を引き起こすのは、一般道ではあり得るのです。それは、「無謀な追い越しによる事故」等と、一時期そのような表現でのニュースがありました。本当に無謀な追い越しによる事故なのか? 私が並走車の事に興味を抱き始めたのは、そのことが原因でした。
家族連れの乗用車が、遠い地方へ出かけて、或いは帰省中に無謀な追い越しをする? 信じられませんでした。私の結論は、釣られて並走して追い越されるのを邪魔しているのが、主な原因だと今では断言できます。
長い間、釣られて並走する車のことを書いてきました。これで終わりに致します。次回からはもっと、やわらかい話題にしたいですね(笑)
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