元ベテラン運転手 トラさんの「泣いてたまるか」No.75

元ベテラン運転手 トラさんの「泣いてたまるか」No.75
追想記(並走車7)
現在のトラックの最高スピードは90km/hに抑えられている。ということは、それ以上で走る乗用車を追い越すことができない。つまり、乗用車がそれ以上のスピードで並走してくると絶対に追い越すことが不可能ということだ。
これが、多くのトラックドライバーのストレスを引き起こしているのは、間違いないだろう。そして、大型の90km/hのリミッターと言い、4t車の社則制限90km/hも同様に、多くの並走車にストレスを感じながら走っていると思う。
 私の場合、現在では通用しにくい社則制限が制定される以前の話なのだが、釣られて並走してくる乗用車に対して、揺さぶり(フェイント)をかけていた。それは、ある一定の速度(105~115km/h)くらいで、全てといっていいくらいの確率で、釣られて速度を上げてきた乗用車がスピードダウンをするのが確認できていたからだ。
つまり、無意識に釣られて速度を上げているということを、そのドライバーに気が付いてもらうということだ。
前を80km/hで乗用車が走っている場合、追い越しをかける時、こちらはトラックなので加速性能が乗用車には劣る。当然、一気に追い越すことが出来ない。当然のように、乗用車は釣られてくる。問題はその時なのである。
10km/hくらいスピードが上がった時点で、一気にこちらがスピードダウンを行ない、その追い越しをかけた乗用車の後ろに再度着く。その時、並走してきた乗用車は、自分のスピードに改めに目が行く。そう、自分が釣られて並走し、追い越しの邪魔をしていたことに気が付き、反省(?)してくれるのか、再度の追い越しではスムーズに追い越させてくれる。
もちろん、後続の車がいないかどうかの確認が大事なのは言うまでもないことで、スピードをダウンさせる時、追突事故の原因車両になりかねないからだ。
つまり、一番大事な長距離運行での時間帯の、夜間、深夜、未明の時間帯は出来なかったことが多かった。しかしながら、80km/h程度で走っている乗用車に対しては、90km/h制限で走らざるを得ないトラックでも、この方法が通じることは、私自身が経験している。
私が、このことで一番の収穫だと思っているのは、乗用車が悪意ではなく、無意識に並走しているというのを、体感的に理解し、そのことに苛つくことがなくなったということだ。
トラさんのブログ「長距離運転手の叫びと嘆き」
http://www.geocities.jp/boketora_1119/
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