愛宕自動車工業(大分県中津市)は今年3月、移動図書館車の新モデルとなる「青空図書館」を発売した。発電/蓄電機能を持ち、災害支援車両としても運用可能な進化型の移動図書館車の実力を探る。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2024年6月発売「フルロード」第53号より
発電/蓄電機能を持つ移動図書館車
愛宕自動車工業は長年「トラック図書館」というネーミングでオーダーメイドの移動図書館車を製作してきた。このトラック図書館の派生モデルとして今年3月にデビューしたのが「青空図書館」だ。
青空図書館は、従来のトラック図書館に太陽光発電システムを追加搭載したもので、通常時は移動図書館車として、災害時は発電/蓄電機能を持つ災害支援車として1台2役の使い方ができるのが特徴。
もともと移動図書館車は山間部や離島など、災害に見舞われることの多い地域をメインフィールドとしていることから、有事の際に災害支援車として役立てられるよう、発電/蓄電機能をはじめとするさまざまな機能を盛り込んだという。
ボディ天井部に搭載されるソーラーパネルは最大発電量1035Whで、リアオーバーハング部に搭載される容量9600Whの蓄電池を約1日でフルチャージできる。蓄えられた電力は家庭用100Vで取り出せて、IH調理器や電子レンジ、携帯電話の充電などに利用可能だ。
移動図書館車としての機能を損なわないための工夫とは?
青空図書館は「移動図書館車としての機能を損なうことなく、発電/蓄電機能を搭載する」ことをコンセプトに開発が進められた。
例えば、従来のトラック図書館は低重心化のためリアオーバーハング部にカウンターウェイトを搭載しているが、青空図書館はこの部分に蓄電池を搭載することで、低重心化と蓄電機能を両立。蓄電池にはあえて鉛バッテリーを使用している。
また、発電/蓄電機能の制御盤をボディ前壁部に埋め込むことで、荷室スペースを確保。太陽光発電システムを搭載しながら、従来のトラック図書館と同じ約2000冊分の収納スペースを確保。これとは別に非常食などを保管するためのスペースも設けられている。
なお、青空図書館のボディ仕様はユーザーの要望に応じてオーダーメイド可能で、幅広いベースシャシーに対応。今回取材したデモカーはGVW5トン級小型トラックをベースとし、ボディの左右に書架(本棚)を備える「両側書架」仕様となっていた。
主な装備は、格納式ステップ、受付机、エアコン、室内灯、読書灯、放送設備などで、ボディ左右と後方に跳ね上げ式のドアを装備。本の劣化防止、およびエアコンの効果を高めるためボディは断熱材入りのアルミサンドイッチパネルとされており、室内高は1820mmを確保している。
独自のボディ復元/再生サービスで長寿命化も実現!!
青空図書館は愛宕自動車工業独自のサービスである「リニボ」にも対応している。
リニボは同社が2006年に開始したトラックボディのリニューアルサービスで、パイプの内側まで防錆処理を行なう「管内防錆」などの独自技術に寄り、長く使われたトラックボディを新車時のように復元/再生するもの。
これまで移動図書館車は対象外だったが、青空図書館の発売に合わせて大正となった。移動図書館車の買い替えサイクルは約10年というが、10年先に買い替えとリニボの2つの選択肢を提案できるのも同社ならではの強みと言えそうだ。
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