48hクロノステージでポテンシャルを発揮
1月11日、ダカールラリー2024は前半戦の最終ステージを迎え、サウジアラビア南部のシャバイタを基点に2日間で547kmを走破する「48hクロノ」を実施した。
舞台となる「エンプティクオーター」は同国南部に広がるルブアルハリ砂漠の東端部。柔らかい砂の大砂丘が連続するロングステージは今大会最大の難関であるとともに、午後4時時点の進み具合に応じて参加者をコース上の7地点に振り分け、簡易ビバークに宿泊させる新たな試みも注目を集めた。
難易度の高い砂丘越えを得意とする日野チームスガワラのHINO600シリーズはこのステージで高いポテンシャルを発揮。1日目の行程をトラック部門6位で終え、2日目は燃料系トラブルで約5時間のタイムロスを喫しながらも解消後はペースを上げてゴールした。
コースはまずシャバイタのビバークから東に向かい、110kmのリエゾン(移動区間)でSSのスタート/ゴール地点に移動。北はUAE(アラブ首長国連邦)、東はオマーンとの国境が近いエリアに設定されたSSは8の字を横にしたループ状で、同じ地点にゴールする。路面は砂丘といっても厳しい登りで高い砂山を越える箇所が多く、砂丘の間にはショット(乾いた塩湖)も何度か通過した。
ステージ中の車両整備や部品供給が許されないのはこれまでのマラソンステージと同じだが、2日間で2つの行程を走っていたマラソンに対し、48hクロノでは1つのステージを2日間かけて走破する。このためコース上に193km地点から523km地点までの間に7箇所の「ブレークゾーン」(簡易ビバーク)が設置された。
最も近い地点で午後4時半、最も遠い地点では午後3時半を過ぎると各ブレークゾーンに到達した参加者はそこで停められ、同地で宿泊する。翌朝は午前6時半から前日の到着順に再スタートが切られ、ゴールを目指す仕組みだった。
菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組のHINO600シリーズは11日の午前10時21分にトラック部門の7番手でSSを走りだした。むずかしい砂丘を手堅くクリアしながら、午後2時過ぎには193km地点にある最初のブレークゾーンを6番手で通過。その後も大きなミスやトラブルもなく、2つ目のブレークゾーンが設定された294km地点に6番手で到達したところで順調にこの日の競技を終えた。
しかし、走行後の点検で燃料の戻り管の折損が発見され、その場で修復したが、すでに相当量の燃料を失っていた。2日目は省燃費走行で走りだしたが、給油ポイントでもある398km地点の30km手前でガス欠症状に見舞われてストップ。痛恨のタイムロスとなった。
車両が傾いた状態だったため、タンク内に偏っていた燃料をポリタンクに汲み出すなどの方法でエンジンを掛けて、その場を離脱。給油ポイントで燃料を補給したあとは復調したが、ゴールから残り100kmほどで日没を迎え、ペースダウンを余儀なくされた。SSゴールは午後8時頃であった。
その後リエゾンでシャバイタのビバークに戻ったチームは、休む間もなく853km先にある次のビバーク地リヤドへの移動を開始した。到着は13日未明の予定。この日は大会唯一の中間休息日となり、シャバイタから一足先に到着していたメカニックたちが入念な点検整備を行なう。
中間休息日に車両を集中的にリフレッシュ
1月13日、ダカール2024はサウジアラビアの首都リヤドで中間休息日を迎えた。この日は競技は行なわれず、郊外の飛行場近くに設けられたビバーク地でメカニックたちが後半戦に向けた車両の点検整備を終日行なった。
HINO600シリーズでトラック部門に参戦している日野チームスガワラは、11日~12日にかけて行われた48hクロノステージを午後8時頃にゴールすると休む間もなくシャバイタからリヤドへ移動。午前4時すぎにビバークに到着した。
長丁場を終えて休憩に入ったドライバー/ナビゲーターと待機していたメカニックたちが入れ替わるように早朝から作業を開始。予定されていた前後リーフスプリングやブレーキローターの交換のほか、前日のステージでトラブルの出た燃料配管の交換や厳しい砂丘越えで傷めたボンネットの補修なども行なわれ、後半戦に向けて車両はしっかりとリフレッシュされた。
後半戦の初日の行程はリヤド~アル・ドゥワディミ。リヤドから西に向かい、砂丘越えを含むハードな483kmのSS(競技区間)が予定され、リエゾン(移動区間)を加えた総走行距離は873kmと、今大会最長のステージとなる。
昨日のステージをトラック部門10位でゴールした日野チームは累積順位をトラック部門の8位に上げて前半戦を終了した。
ファイナルギア比の適正化によって低速域の加速性能が大幅に向上したHINO600シリーズは8866㏄の小排気量エンジンながら13リットル級のライバル勢にそん色ない走りを見せており、引き続き厳しい戦いが予想される後半戦もさらなる上位を目指すべく、チームは気迫を漲らせている。
【日野チームスガワラのスタッフのコメント】
菅原照仁
夕べ8時過ぎにシャバイタを出発して850km走り、朝4時過ぎにリヤドに着きました。今年のクルマは気持ちよく走れるし、速いので明日からの後半戦をさらなる上位入賞を目指して頑張っていくつもりです。
門馬孝之
本来中間日に予定していたATやトランスファの交換は不具合が出た際に行なったので、今日はフロントリーフ交換が一番の重整備となります。ATは予防整備的な対処で、燃料管の折損とトランスファの不具合以外はトラブルはなく車両は好調。このまま後半戦を乗り切りたいです。
鈴木誠一
クルマが調子良いだけに昨日の燃料トラブルはもったいないことをしました。噴射系の燃料戻り管は前回も折れたことがありますが、規則で材質を変えられないので工夫して対応します。
小島真太郎
前半戦を終えて現場には慣れてきましたが、同時に自分の反省点も増えてきました。ビバークで待機していると車両が帰ってきたときに高揚感のような不思議な気持ちになります。
福田剛史
結果的に重整備の日程が重ならず、バランスよくできたのでよかった。昨日は作業をしていないので体調を整えることができました。明日からまた元気に走れるように頑張っていきます。
斎藤明延
埃のせいなのか一昨日から喉が痛いです。競技車の整備は特殊なところが多いですが、製作時から携わってきたので構造は理解しています。燃料戻り管の件は配管を見直すことを考えています。
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