1月1日〜15日にかけ今年も中東サウジアラビアでダカール・ラリー(旧:パリ−ダカール・ラリー)が開催された。
第45回大会を迎えた今年のダカールのフタをあけてみると、トラック部門では市販の特装系トラック・路線バスなどで広く採用されている米国アリソン社製トルクコンバーター式ATを搭載した競技車が1位〜10位までを席巻するという結果に。
日本の日野チームスガワラの「HINO600・HV」にも昨年に引き続きアリソンATが採用され、総合10位の躍進に貢献した。ダカールでトルコンATが支持される理由とはナニか?
文/フルロード編集部、写真/日野自動車・ASO
過酷なクロスカントリー・マラソンの概要
ダカール・ラリーはフランス人のティエリー・サビーヌが、元旦にパリ〜セネガル(アフリカ)の首都ダカールを目指そう(故にパリダカの異名で知られる)と提案したことから始まった。
その後2009年に南米大陸へ場所を移し、2020年から今の中東サウジアラビア1国開催に移行。戦いの舞台は大きく変わったが、クロスカントリーラリーの最高峰イベントとして主催者ASOによる難易度の維持を目指したコース設定が行なわれている。
4回目のサウジアラビア開催となる今年のコースは、北西海岸部のシーキャンプをスタートし、内陸部を横断しながら1月15日に東海岸のダンマームまで総距離8,549kmを走破するという日程だ。
前半戦は北部の山間地で砂丘とともに岩場やワジと呼ばれる枯れ川の底を行く行程で、後半は最大の難所であるエンプティークオーターと呼ばれるサウジアラビア南東部のルブアルハリ砂漠を舞台に、繰り返し現れる高低差の大きい砂丘と戦うコースとなっている。
アリソンATとハイブリッドシステムを組み合わせて挑んだHINO600
近年のダカールは高速ステージが増えたことから、旋回性能よりも低速からいかにトップスピード(トラック部門では上限140km/h)までタイムロスがなく到達できるかが重要視される。
日野チームスガワラが昨年から投入したアリソンAT+キャパシタハイブリッドの組み合わせも、排気量で劣る(ライバル勢はレギュレーション上限の13リッター級が多い中、日野は10リッターエンジンを搭載)動力性能の差を埋めることを狙ったものだ。
トルコンATはトルクコンバーターによるトルク増幅効果が得られ、遊星歯車式のギアボックスによって変速時間が短く間断のない動力伝達ができるため、特に砂漠など走行抵抗が大きい路面では大きなメリットをもたらしてくれる。
こうした理由によりダカールのトラック部門では、アリソンATが標準的な装備になりつつあり(トルコンATの採用は四輪部門全体に広まっている)、AT車が1位〜10位までを席巻するという結果につながっている。
日野チームスガワラの代表兼ドライバーの菅原照仁は今回のダカール2023を振り返り、
「年々、参戦車の技術力の向上に伴い、コース設定も難しさを増しています。今年設定された未踏の地であるエンプティークオーターは過去に経験したことのない過酷さでした。次々に現れる砂丘はうねりが大きく、加えて砂が非常に柔らかいため、走行にとても神経を使いました。
マニュアル車では傾斜した砂丘を駆け上る際に変速した場合、トルク抜けしてしまい車両がスタックや横転する危険性が増えますが、アリソン製ATでは変速時のトルクの抜けが発生しないため、シームレスなシフトチェンジが可能となり、全体的なタイムアップにつながっていると感じています。
今回、稀に見る豪雨によって砂丘が泥地化したところが多々あり、重い路面で走りづらい中、乗務員はシフトチェンジを気にすることなくアクセルレーションできたため身体的な負担軽減もできました」と語っている。
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