三菱ふそうトラック・バスはこのほど、同社の中型トラック「ファイター」がスワップボディ車に対応したと発表した。子会社のパブコが大手物流企業のセンコーの要望に応えて開発したもので、新開発のエア式昇降装置を搭載するのが最大の特徴。
スワップボディ車は、脱着機構を備えたボディを搭載する特装車。トレーラのように、シャシーとボディの分離/合体が可能で、荷役作業を専門スタッフに任せることで、ドライバーは本来の運転業務に専念でき、負担軽減や長時間労働の抑制に寄与。もともと欧州で普及していたものだが、近年、日本の運送会社でも導入が進んでいる。
パブコでは、1970年代後半から中型/大型スワップボディ車を製作。近年は架装スペースの問題で製作をストップしていたが、このほど新機構の採用で中型スワップボディ車の製作を再開。新機構の採用には、三菱ふそうファイターの6気筒エンジンが不可欠だったというが、一体どういうことなのか? 舞台裏の開発ストーリーに迫る!!
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2021年12月10日発売「フルロード」第43号より
7.5Lの6M60型エンジンが架装成立の決め手に
三菱ふそう子会社のパブコは、バン/ウイングボディの製作で有名な架装メーカー。1970年代後半から、中型/大型スワップボディ車の製作も行なってきた。ちなみに、当時の製品名は「デマンダブルボデー」で、記録が残る1979年以降の生産台数は1500台にのぼる。
同社の従来の中型スワップボディ車は、油圧式昇降装置でボディの脱着を行なう仕組みを採用。だが、近年は排ガス規制の強化に伴ってトラックシャシーに多数の補機類が装備。架装スペース不足となってしまい、約3年前から製作をストップしていた。
今回、総合物流企業のセンコーの要望を受け開発した中型スワップボディ車は、従来の油圧式昇降装置に代えて、新たにエア式昇降装置を採用。油圧式よりも必要な架装スペースが小さいエア式を採用することで、架装スペースの問題を解決することに成功している。
いっぽう、エア式昇降装置の駆動には充分なエア供給量が必要。最近の中型トラックでは4気筒のダウンサイジングエンジンが主流だが、同装置を用いる場合、エア供給量が不足してブレーキ用エアが足りなくなるなどの問題があった。
そこで今回はベース車両に三菱ふそうファイターFK系(GVW14.5t級)を採用。同車両は、3.9L/直4の4V20型と7.5L/直6の6M60型という2種類のエンジンをラインナップしており、今回は後者を搭載することで充分なエア供給量を確保。架装を成立させている。