日本ミシュランタイヤの「ウインター・エクスペリエンス」から

日本ミシュランタイヤの「ウインター・エクスペリエンス」から

その5 間もなく誕生するトールエクスプレスジャパンと タイヤによるコスト削減の取り組み

日本ミシュランタイヤの「ウインター・エクスペリエンス」では、さまざまなプレゼンテーションが行なわれましたが、中でも注目されたのは、フットワークエクスプレス㈱の川上泰生購買部部長によるプレゼンテーションでした。フットワークは、今回の新スタッドレス「X ICE GRIP ENERGY XZW」の氷雪路試験にもトールグリーンの供試車両を提供していますが、今年3月30日、社名を変更し、トールエクスプレスジャパンとして新たなスタートを切ります。トールはアジアで最大規模の物流企業ですから、トールエクスプレスジャパンは日本のトラック業界にとって注目の存在です。もうひとつ注目したいのは、使用する車両やタイヤなどを購入するに際して、これまでの日本の運送事業者に見られたような「慣習」や「情実」を廃して、製品を実際にテストし比較検討して、より良い物を追い求めていく姿勢です。実は、プレゼンテーションを行なった川上部長とは、ウインター・エクスペリエンスの席上、挨拶を交わす機会がなかったのですが、後日、川上部長は大阪からわざわざ私に会いに品川まで訪ねてきてくれました。これには大変感激したんですが、昼食を挟んでいろいろお話させて頂き、意気投合というか、現場を重視する姿勢には感銘を受けました。ちなみに同社のニ―ル・ポーリントン社長もトラック元ドライバーで、現場叩き上げの人だそうです。以下、ウインター・エクスペリエンスでの川上部長のプレゼンテーションを要約してお伝えします。(キャップ)

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弊社フットワークエクスプレスは2009年、オーストラリアの物流会社であるトール(TOLL)グループの傘下に入りまして、現在事業を営んでおります。弊社の概略を先に少し説明させて頂きます。トールグループというのはオーストラリアで創業しまして、現在世界55カ国に4万人の従業員と1200の拠点、グループ企業80社超という企業概要になります。特にアジア/オセアニアで事業を展開しておりますが、アジア/オセアニアではナンバー1の物流企業という位置づけになります。その中で、我々フットワークエクスプレスはトールグループのグローバルエクスプレスというディビジョンに入っておりまして、ここはいわゆる特積みと言うんでしょうか、一般の輸送をしている会社のディビジョンになっております。ちなみにトールグループにはいろんなディビジョンがあるんですが、その中の1つということで、このグローバルエクスプレスのディビジョンだけで売り上げの65%ほどを占めるという形になっております。

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次に我々フットワークエクスプレスですけど、いま現在、赤と白のストライプと犬のマークのカラーでやっておりますが、実は本年3月30日、トールエクスプレスジャパンに社名変更を行ないます。これからはトールグリーンという鮮やかな緑のボディ塗色になり、全世界55カ国の全社が同じボディカラーのトラックで事業をしていく「One Toll(トールはひとつ)」という形でやっていきます。トールグループはM&Aで大きくなってきた関係もあって、いろんな塗色のトラック、いろんなマークの会社がありまして、これをワンブランディングに統一しようということで現在作業を進めております。

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フットワークエクスプレスの本社は大阪の江坂にあります。もともとは日本運送という社名でしたが、2004年に社名変更し、同年九州産交運輸がグループ企業となりました。さらに前述のように2009年にトールグループの傘下に入ったことで、一般の輸送はもちろん、海外との輸出入、さらに倉庫・保管とか、また物流に関する提案というものをやっている会社でございます。ちなみに社長と私の上席でありますCFOはオーストラリア人です。また現場のお店の人を指導する人間もオーストラリアからオペレーションのマネージャーに来てもらって現場指導などをしております。

現在わが社では、トール社の意向もあり、安全や環境に非常に強い関心を持って指導しております。その中でもエコドライブ、車両の点検、また廃棄物の適性処理および削減ということに注力しています。2005年からISOの9001とISOの14001を取得してもう6年以上経過しており、環境面では気を遣っております。特に車両につきましては、Nox・PM法の関係もありまして、環境対応の車両を随時導入しております。また、前述のエコドライブに関してもドライバーには随時指導をしておりまして、各支店には1日単位もしくは週単位でエコドライブの数値、燃費がどれだけ変わったかという表を貼り出しまして、最低でも週1回指導しているという状況です。

交通事故の削減という意味で、社内で起きたケース、もしくは社外で起きたケースの事故事例を話しながら、自分たちはどうやって事故を防げるかということも含めて随時車内で研修しております。目標意識の向上という意味では、エコドライブや燃費については非常に強く指導しておりますし、みんなで考えて燃費向上および環境に対する取り組みというものを進めているところでございます。

その中で私は、購買の部門を担当して4年になるんですが、私が購買の部門に来た時には、社内のタイヤのミシュランさんの比率は確か3%くらいでした。いま現在はたぶん80%を超えているか、ほとんどミシュランタイヤを使用しているという状況になっています。これはなぜかというと、いくつか理由はあるんですが、ひとつは営業の方の提案力の違いですね。他社の方はカタログで説明するだけで、その良さを実証することはなかったんですが、ミシュランさんに関しては、実際にテストでタイヤを履かせてもらって、その結果の数字をきっちり取って示してくれた。要は現物で実践をしたと……。我々購買部は基本的にカタログ買いはしない。物は見てから買う。例えば、タイヤでもテストをさせてもらいますし、燃料、オイルもそうですね。車両についても買う前にメーカーさんのテストコースで試乗させてもらってテストをするということをやっております。ミシュランさんは一番協力的な会社さんでもありますし、また結果も出ているということで、ミシュランタイヤを順次購入しているという形で現在まで来ております。

2つほど弊社の事例をご紹介したいと思います。タイヤの価格、寿命、キロ当たりのコストと3つの数字を出してますが、簡単に私の口から申し上げますと、タイヤの価格ですが、確かにイニシャルコストは、ミシュランさんは2割弱ほど高いんですが、その代わり寿命が長もちします。約80%ほど長くもちます。

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結果として何が違うかといいますと、1km当たり何円かかるかコストを計算した時に、他社とは全然違う数字が出るんですね。ここに出てる数字は、我々フットワークエクスプレスの実際の車両のデータで、それもかなりの数のデータを取った結果です。我々がタイヤを買う時は当然、品質とかコストとか大事なものはありますが、コストの部分に関してはキロ当たりいくらという計算で社内で決めますので、そういう意味ではミシュランタイヤが非常に有利であります。我々は社内で整備工場を持っておりまして、例えば長もちしないタイヤであった場合、何度も取り替えなければなりませんし、取り替えるたびに整備工場までトラックを輸送したり、そういう余分なコストがかかりますので、タイヤが長くもつということは非常にいいことだと思っております。

続いて次のパターンですが、これもイニシャルコストは高いんですが、寿命は倍くらい違います。それとキロ当たりのコストも先ほどと同じような形ですね。

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ちなみにミシュランタイヤが43万7000kmという長寿命であることをオーストラリアから来た私の上席に話しましたら、非常に驚いていました。オーストラリアでは彼は別の会社のCFOをやっていたんですが、そこでは他社のタイヤを使っておりまして、この数字は非常に興味深いというか素晴らしいと話しておりまして、我々日本を含めてグループ会社のタイなどでもミシュランタイヤを導入しているという形でございます。

また、ミシュランさんは3Rということをよく話されますが、ロングライフ、リグルーブ、リトレッドですね。その中でリグルーブの話をしますと、リグルーバーという機械でタイヤを削る作業なんですが、私もちょっとやらせてもらいましたけど、非常にスムーズに出来ます。うちの女性社員にもチャレンジさせましたけど、彼女でも非常に簡単に出来た…。去年うちの全工場を回って指導をしたんですが、非常にスムーズにリグルーブという作業が出来るようになりまして、また今年度の研修ということも考えております。

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それとリトレッドですね。これはリグルーブした後、タイヤがまた減ってきますので、それを台タイヤにしてリトレッドして再生する方式ですが、これも現在トライアルでやっております。やはり社内でも再生タイヤに対してはまだ疑問を持っている人間もおり、一方で積極的に取り入れたいという考えの者もおりまして、その辺で今トライアルをしているという状況でやっております。また自社のケーシングの有効利用ということについては、環境に対する意識づけとかタイヤに対する知識ですね。そういうものを持ってもらおうということで研修しています。以上、タイヤの3Rについては力を入れてやっているところでございます。
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弊社は低燃費タイヤを順次導入しておりまして、5.6%の改善が得られたというところです。これは長距離を走るトラックの平均ということで、走行条件とか場所とか積んでるものが違ったりもしますが、平均するとこれくらいの数字が出ているという結果になっております。
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運送会社としてトラックで経営を営んでいる我々にとって一番大事なのは、車両の効率性と安全性ということになります。その中で車両の効率性というのは、積載効率や燃費効率になると思います。積載効率でいうと、ボディはたくさん積めるように薄くて軽くて丈夫なものがいいわけですし、シャシーも当然軽い方がいいわけですが、その前にて安全性が高いものでなくてはなりません。燃費効率については、シャシーとボディとタイヤの3つが大きな要素になると思いますが、タイヤも一番いい組み合わせのものが最も力を発揮できると思いますので、2種類のエナジータイヤを使い分けて、燃費と寿命の検証をしています。
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積載効率や燃費効率を高め、コストを削減することによって、会社の経営にも資することが出来るのではないかと考えております。我々は約3000台のトラックで事業を行なっていますが、今後もこういった取り組みを積み重ねつつ、トールエクスプレスジャパンとして全国ネット、さらに海外の物流についても大きく力を入れてやっていこうと考えています。ご清聴ありがとうございました。

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