三菱ふそうが開発中の大型ハイブリッドトラックをめぐって その1

三菱ふそうが開発中の大型ハイブリッドトラックをめぐって その1
大型車こそハイブリッドトラックの本命だ!
米国の市場調査会社であるパイクリサーチ社がこのほど発行した「世界の普通および大型ハイブリッドトラック市場」(今年9月発行/グローバルインフォメーションより販売)によると、世界のトラックメーカー各社は、高騰するディーゼル燃料コストとCO2の排出量制限に対応すべく、ハイブリッドトラックに対する評価を高めつつあり、世界の普通および大型トラックのハイブリッドの年間売り上げ台数が10万台を超えると予測している。
日本では、トラックのハイブリッド化というと、当り前のように小型トラックのそれを指すが、世界の潮流は、むしろ中型トラックや大型トラックのハイブリッド化に向かっている。なぜか? 簡単な話である。中・大型トラックは、小型トラックとはケタ違いに燃料を消費するからだ。中でも大型トラックの燃費の向上は、世界共通の最も強いユーザーニーズであり、それに応える手段としてハイブリッドが有効となれば、それを追い求めるのがトラックメーカーの努めだからだ。
しかし、あるトラックメーカーのハイブリッドの開発担当者に、大型トラックのハイブリッド化の可能性を問うと、こんな答えが返ってきた。
「パラレル方式のハイブリッドは、ゴー・ストップの多い集配などに適したシステムなので、小型トラックにこそ適している。ヨーロッパの大型トラックのハイブリッドも、ゴミ収集車など限定的な用途に限られているのではないか。日本では大型トラックでゴミを収集することは、ほとんど無い。したがって大型トラックのハイブリッド化は現実的ではないと判断している」。
正直言うと、あまりにも当り前すぎて、ちょっとがっかりしてしまった。非常に口幅ったいことを言うようだが、メーカーの「つくる側の論理」が優先されて、ユーザーの「使う側の論理」に与していないのではないか、目的のための手段であるべきなのに、手段が目的を選んでいるような違和感さえ感じたのである。
もちろん、小型トラックのハイブリッド化も大事だと思う。この分野の日本のメーカーの技術は間違いなく世界トップレベルだし、それを誇らしく思う。しかし、その技術をこじんまりと島国的な発想にとどめていないだろうか、技術だけが独り歩きし、ユーザーニーズに応えるという本来の目的が置き去りにされていないか……。
その意味で、今回の三菱ふそうの「意表を突いた」長距離輸送用の大型ハイブリッドトラック「スーパーグレート エコ ハイブリッド」の開発のニュースは、非常に嬉しいのである。そこには、日本のトラックメーカーを縛ってきた「島国的発想」のブレークスルーがあるからだ。 <つづく> (キャップ)
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昨日行なわれた三菱ふそう喜連川研究所での「試乗会&環境技術説明会」でのひとコマ。開発中の「スーパーグレート エコ ハイブリッド」の前での写真撮影は、向かって左から、今回の大型ハイブリッドトラックを取りまとめている開発本部パワートレーン開発統括部グローバルハイブリッドセンター センター長兼HEVシステム開発部長の石井源一郎氏、この10月1日より前任のアイケ・ブーム氏に代わって取締役副社長 開発本部長に就任したグスタフ・トゥッシェン氏、そして喜連川研究所所長の諸隈弥氏。

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発売時期は未定ながら、いよいよ走り出した長距離輸送用大型ハイブリッドトラック「スーパーグレート エコ ハイブリッド」



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