自動車の電動化を積極的に推進してきたのが欧州だが、このところ特に大型バッテリーEVトラックで中国や米国メーカーの参入が相次いでいる。
ドイツで偶数年に開催される世界最大の商用車見本市・IAAトランスポーテーションの出展企業を見ても、地元である欧州の伝統メーカー6社に対して、中国トラックメーカーの出展は2ケタを優に超えた。米国のテスラも「セミ」欧州仕様を正式に発表している。
生産財(お金を稼ぐ道具)であるトラックはディーゼル車よりコスト優位となれば急激に電動化が進むとされていたが、ホルムズ危機なども影響して欧州は既にコストパリティに到達したとみられ、欧州のBEVトラック市場は世界の各社が入り乱れる戦国時代に突入している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Tesla・BYD・北汽福田汽車・WattEV
テスラがIAAで正式に発表した「セミ」欧州スペック
米国のテスラはバッテリーEV(BEV)大型トラック(セミトレーラけん引車)「セミ」の欧州仕様をIAAトランスポーテーションで正式に発表した。北米市場に続いて欧州でもBEVトラックを本格展開する。セミ欧州スペックは次のようなものだ。
●航続距離:550km(フル積載)
●電費:1kWh/km
●充電:MCS 800 kW
●連結総重量:40 t
●車両重量:9100kg
●25kWのePTOを搭載
米国向けのセミ・ロングレンジバージョンは航続距離が500マイル(805km)なので、欧州向けの最大550kmはかなり少なくなっている。また、車両重量は約3000ポンド(1360kg)軽くなった。
大型トレーラの連結総重量(GCW)は、米国では82,000ポンド(37.2トン。BEVに対する2,000ポンドの緩和措置を含む)だが、欧州は40トン。積載量を確保するため、搭載するバッテリーを減らした影響が、車両重量の軽減と航続距離の減少に表れたものと思われる。
エクステリアで目を引く変更は、米国向けでは恐らく法規対応として必要なリアビューミラーが、欧州仕様ではデジタル式(カメラ&モニターシステム)を選択できることだ。ライトボディも米国向けのラップアラウンド型からLEDストリップ型となり、いっそう未来的な雰囲気に。
もう一つ、充電規格も大きな変更点だ。欧州向けは最大800kWのメガワット充電システム(MCS)となる(米国では専用の1.2MWチャージャーを利用できる)。
エネルギー効率(電費)の公称値である1kWh/kmは、米国向けの1.6kWh/マイルと同等。また、欧州・中国メーカーが公表している電費値は(条件が異なるので厳密な比較ではないが)、概ね0.9~1.2kW/km程度なので、ほぼ平均的な値である。
当面は欧州仕様もテスラのギガファクトリー・ネヴァダ(米国)で製造するが、イーロン・マスク氏は欧州向けセミは(将来的に)ベルリンで製造すると発言している。欧州向けセミは2027年に納車を開始する予定だ。
最も注目されるのはその価格だが、欧州仕様の価格についてテスラは公表していない。米国仕様は26~29万ドル(~4600万円)とされ、これは中国メーカーにも対抗可能な価格帯だ。
欧州の大手トラックメーカー各社は既にBEVトラックを市場投入しているが、価格帯は40万ユーロ(7100万円)に近いそうで、躍進する中国勢を相手に苦戦している。テスラ・セミは欧州製BEVと中国製BEVの中間の価格帯に投入されるとみられている。

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