米国のトランプ政権は前政権の環境政策の見直し・撤回を進めているが、大型トラックの排ガス規制も緩和されるようだ。規制対応のためにトラックの価格が高騰しており、2027年に開始予定だった新たな規制の見直しにより新車価格は約100万円安くなるという。
大型ディーゼルエンジンの排出ガス規制は世界中で段階的に強化されてきた経緯があり、NOx排出量に関していえばこの半世紀で99%減少した。残りの1%分を対象とする新規制は電動化を促す性質が強く、米国の環境問題への対応はまた一歩後退する。
ただし、物価高騰が続くなかでトラックユーザーに不必要なコスト負担を強いる政策には異論もあり、物流の関係者は新方針を支持している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/ATA・Mack Trucks・Peterbilt
米国、来年施行予定の大型車排出ガス規制を「緩和」へ
米国環境保護庁(EPA)のリー・ゼルディン長官は2027年7月9日、アメリカ合衆国の建国250年を記念する式典が続くなか、「不必要かつ非現実的な規制」を見直すと述べ、大型トラックの排出ガス規制を緩和すると発表した。
今日の大型ディーゼル車のほとんどは、排気ガスに含まれる有害物質を浄化するため複雑な後処理装置を搭載している。この後処理装置だが、しばしば故障しトラックを停めなければならないので、運転手や運送会社にとっては負担になっている。
また大型トラックの新車価格は、(伝統的に日・欧より安かった米国のトラックでも)日本円にして数千万円に達する高価な車両となっており、高価格化の大きな要因の一つが段階的に強化される排ガス規制への対応とされる。
今回の規制見直しにより米国の運送業界全体で120億ドルのコスト削減となり、トラック1台当たり6000ドル(約100万円)安くなる可能性があるという。
米国の規制は窒素酸化物(NOx)の排出基準が厳しく、2027年には更に厳格な規制(EPA2027)がスタートする予定だった。「緩和」といっても耐用年数や保証期間など運用ルールの緩和で、基準値自体は維持される。このためEPAは環境保護と経済の繁栄は二者択一ではなく、不必要な経済的負担からの解放だとする。
米国の大型トラックメーカーやエンジンメーカー、運送会社、米国トラック協会(ATA)などは、バイデン政権下で成立した新規制は定められた期限内に達成不可能であると主張してきた。ディーゼルエンジンの販売継続が不可能になり、米国のライフラインを支えるトラックの供給途絶が起こる可能性を警告していた。
実際には多くのメーカーがEPA2027に対応したのだが、検証期間は充分ではなく、車両価格のさらなる高騰を招いた。前政権の環境政策をことごとく撤回しているトランプ政権は、現在の状態はトラック運送業の安全性と生産性を損なっており容認できないとしていた。
なお、これに関連してEPAは事業者等が所有する機器を修理する権利があること(修理の自由)を再確認しており、大統領も修理の自由を促進する覚書に署名している。EPAは後処理装置の故障を防ぐためであれば、従来の排出センサーを取り外すこともこの権利の範疇にあるとしている。
複雑化して修理できないトラックは、米国憲法が保障する自由を巡る「憲法の問題」でもあるようだ。

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