トラックドライバー不足で外国人材の活用に期待が掛かるが、ヤマト運輸はベトナム人ドライバーの採用・育成でFPTグループと合意した。自動車運送業分野の「特定技能1号」制度を活用し、日本で働くトラックドライバーとしての定着を支援する。
ヤマト運輸に入社したベトナム人ドライバーは、宅配ではなく拠点間輸送を担う大型トラックに乗務するといい、年間で100名の採用を目指している。同制度の在留期間は最大5年となるため、単純計算で最大500名のベトナム人ドライバーがヤマト運輸の幹線輸送を支えることになりそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/ヤマトホールディングス株式会社・フルロード編集部
ヤマト運輸がベトナム人ドライバーを採用・育成へ

日本では2024年に自動車運送業が「特定技能制度」の対象に追加され、国内で外国人トラックドライバーの採用が可能になった。物流の2024年問題と総称されるようにドライバー不足が深刻化するなか、持続可能な物流を実現するために、大手運送会社を中心に外国人材を活用する動きが少しずつ広がっている。
2025年11月12日、宅配大手のヤマト運輸とベトナムのICT企業・FPTコーポレーション傘下のFPTジャパンホールディングスは、特定技能制度を活用したベトナム人大型トラックドライバーの採用・育成に関する協業に合意し、基本合意書を締結した。
ヤマト運輸といえば「宅急便」がなじみ深いが、発表では「拠点間輸送を担う大型トラックドライバー」となっており、ベトナム人ドライバーは宅配ではなく長距離幹線輸送に従事することになりそうだ。
国内の大型トラックドライバーの平均年齢は50歳を超えており、輸送力を確保するためにトラックドライバーを育成することが喫緊の課題となっているが、運送業を志す若者は国内ではなかなか増えない。
いっぽう、ベトナムでは海外での就労希望者が年々増加しており、優秀な若者の国際的な流動化が進んでいるという。
こうした背景からFPTグループがベトナムで長年培ってきた人材育成のノウハウと、ヤマト運輸の安全教育を融合させ、外国人ドライバーの育成・定着・成長支援の基盤を構築することとなった。
自動車運送業での外国人材は「特定技能1号」資格となり、この資格での在留期間は通算で最大5年だ。受け入れ企業や支援機関が職業上・日常生活上の支援を行なうことが義務付けられており、日本語能力に関する試験にも合格する必要がある。もちろんトラックドライバーとして働く場合、車両に応じた運転免許も必要だ。
なお、特定技能で勤務する外国人の賃金に関しては、同じ事業所・会社等に勤務する日本人と同等以上でなくてはならないと定められている。賞与や手当についても日本人と区別すると法令違反となるため、労働力を「安く」確保するための制度ではない。
政府は自動車運送業での外国人材の受け入れ上限を約2.5万人(バス・タクシーも含む)としているが、物流分野だけで20万人の担い手不足が予想されており、国内でトラックドライバーを確保するための取り組みも引き続き重要となる。
ベトナム人ドライバーの採用・育成プラットフォームの概要
各社の役割だが、FPTグループがベトナムの教育機関で特別クラスを開講し、日本でヤマト運輸の拠点間輸送を担う大型トラックドライバーの採用・育成を包括的に支援する。
ヤマト運輸は特定技能外国人が日本で安心して生活し働ける環境を整備するとともに、入社後は大型トラックドライバーとしての成長支援を行ない、毎年100名の採用を目指す。
概要としては次のようなものだ。
1.ベトナムで入学希望者を募集
・FPTグループ教育機関で特別クラスを新設
・2025年12月以降に入学希望者の募集を開始
2.ベトナムで育成(半年間)
・2026年から特別クラスを開講
・日本語(N4レベル)や日本文化(基礎)、ヤマト運輸監修による安全学習(基礎)を受講
・自動車運送業分野特定技能1号評価試験を受験(日本留学後の場合もあり)
3.日本で育成(1年間)
・2026年中に留学生としてFPTジャパンの日本語学校に入学
・日本語(N3レベル)と日本文化(応用)、ヤマト運輸監修による安全学習(応用)を受講
・外国の運転免許証から日本の運転免許証への切り替え試験(外免切替)を受験
・大型自動車第一種運転免許を取得
4.特定技能外国人として日本で勤務開始(5年間)
・2027年にヤマト運輸に入社
・ヤマト運輸の社内運転免許取得後、拠点間輸送を担う大型トラックドライバーとして従事
・日常生活の支援と運転技術の向上などを支援し、安心して働ける環境を提供





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