オランダのダフは新世代のBEV大型トラックの量産を開始したと発表した。2つの電動モーターと3段トランスミッションを組み合わせるパッカー製の最新型駆動ユニットは、エネルギー効率に優れるとともにワンペダルでの運転も可能に。
最大構成での航続距離は500kmを超えるいっぽう、積載量を確保するため豊富なバッテリーオプションを備えている。キャブバリエーションやアクスル構成も豊富に揃え、ePTOを準備するなど架装性にも配慮したという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/DAF Trucks
DAFが新世代BEVトラックの量産を開始
パッカー(米国)グループに属するオランダのDAFトラックスは2025年9月19日、新世代のバッテリーEV(BEV)大型トラックとして「XDエレクトリック」および「XFエレクトリック」の量産開始を発表した。
先進的な電動ドライブラインと共に、空力性能を追求したデザインを特徴としており、一度に500kmを超える運行をゼロ・エミッションで実現する。ディーゼル版のXDおよびXFをベースに、品質と効率、さらに安全性と快適性についても新しい水準をもたらすという。
その特徴は次のようなものになっている。
超モダンなパッカー製電動ドライブ
170kW(230hp)から350kW(480hp)を発揮する最新の電動ドライブユニットは、遊星ギア式3段トランスミッションと組み合わせる。このトランスミッションは軽量、高効率、快適、高速シフトを特徴とし、エネルギー消費を抑える。
モジュラー式バッテリーパック
2~5基を柔軟に選択可能なバッテリーパックにより、合計のバッテリー容量は210~525kWhを実現する。航続距離は210~525kmだ。全てLFP(リン酸鉄リチウム)電池で、コバルト・ニッケルフリーで長寿命かつ安全性が高い。
架装フレンドリーなシャシー
電動トラックでも架装に配慮し、650V駆動のePTOをオプションで用意する。またサイドローダー向けにボルト&プレイパッケージを用意。
豊富なアクスル構成とキャブバリエーション
4×2のトラクタ/リジッド系のほか、6×2のリジッドではプッシャーアクスル(後前軸)ステアの6×2/4と、トレーリングアクスル(後後軸)ステアの6×2*4を設定。GCWは最大50トン。キャブは、デイキャブ、スリーパーキャブ、スリーパーハイキャブを用意し、搭載位置の低さと大型ウィンドスクリーンにより優れた直接視界を確保。カメラによる優れた間接視界とともに安全性と快適性を向上した。なお、電動化によりワンペダルでの運転も可能になっている。
駆動ユニットとオーダーメイドのバッテリー構成
新世代のBEVでは駆動ユニットとしてパッカーの「EX-D1」および「EX-D2」を搭載している。コンパクトな駆動ユニットは2つの電動モーターと3段トランスミッションを組み合わせたもので、同機がシャフトを介して後軸を駆動するセントラルドライブ方式だ。
トランスミッションは遊星ギアセットにより適切なギア比を選択するとともに、部分負荷時には2つのモーターのうち1つを切り離し効率を最大化する。加速や上り坂、回生ブレーキの作動時など、より多くのパワー/トルクを必要とする場合、もう一つのモーターがシームレスに作動する。迅速で快適なシフトチェンジを実現しつつ、従来のトランスミッションより大幅に軽量化し、バッテリー重量による積載量の減少を抑えた。
EX-D1はGVW(車両総重量)29トンまでのXDエレクトリックに搭載し、出力バリエーションは170kW(230hp)、220kW(300hp)、270kW(370hp)の3種類。最大トルクは1500Nmだ。バッテリーパックは2~5個を組み合わせることができ、総容量は210~525kWhとなる。なお回生ブレーキは全て最大270kWとなる。
いっぽう、よりパワフルなEX-D2はXFエレクトリックおよびXDエレクトリックのトラクタ系など、要求の厳しい用途に向けたもので、270kW(370hp)、310kW(420hp)、350kW(480hp)の3バリエーション。トルクは2400Nmに達し、GCW(連結総重量)50トン級のトラクタに適している。バッテリーパックは3~5個で、回生ブレーキは350kW。
物流用のBEVトラックでは、重量のかさむバッテリーと積載量はトレードオフの関係にある。500km以上の航続距離をすべての顧客が必要としているわけではなく、バッテリーの搭載数を減らすことで積載量を増やすニーズに応えるため幅広いバッテリー構成を提供する。
いっぽうで500kmの航続距離と適切な計画充電を組み合わせれば、一日当たり1000kmを超える長距離輸送も純電動で可能になる。パッカーの高効率な電動ドライブラインと、DAFの優れたバッテリー管理システムの組み合わせが航続距離の長さに貢献している。
丸みを帯びたコーナーやフロントガラス、ギャップを抑えたパネル、後端を絞ったキャブ設計も空力のためで、他にサイドスカートやデフレクタ、キャブ下のボトムプレート、そしてミラーの代わりとなるデジタルカメラなども空力を向上しエネルギー消費を抑えるために重要な役割を果たしている。
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