米国のパッカーグループは、トヨタのFCシステムを搭載した燃料電池大型トラックを2025年に製造開始すると発表していたが、どうやら予定が延期され、製造開始時期は未定となっているようだ。
米国では燃料電池トラックで先行するニコラとハイゾンの両社が今年2月に相次いで経営破綻しており、他メーカーとしても慎重にならざるを得ない状況だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Kenworth・トヨタ自動車・フルロード編集部
パッカーが燃料電池トラックの製造を延期?
米国メディアの報道によると、同国の大手トラックメーカー・ケンワースは2025年中を予定していた燃料電池EV(FCEV)大型トラックの製造開始を延期した。同じパッカーグループに所属するピータービルトも同様とみられている。
ケンワース/ピータービルトのFCEV大型トラックには、トヨタ製の燃料電池(FC)システムが搭載される予定だった。
数年前、トヨタとケンワースは米国カリフォルニア州で大型燃料電池トラックの実証実験を行なっており、これに続いてパッカーグループは2023年のACTエキスポで「2025年よりFCEV大型トラックの量産を開始する」と発表していた。
いずれも長距離輸送用のフラッグシップ大型トラクタとなる「T680」(ケンワース)と「モデル579」(ピータービルト)に、トヨタの次世代FCシステムを搭載し、航続距離は450km、水素充填時間は20分とされていた。
発表当時の情報から「次世代FCシステム」はトヨタの第2世代型FCシステムを指すと思われるが、今年トヨタは第3世代型のFCシステムを発表しているので、好意的に解釈すればパッカーのFCEVに搭載するFCシステムも第3世代にアップグレードされるかもしれない(発売されればの話だが)。
なお、トヨタが2025年2月に発表した第3世代FCシステムは大型商用車や重機にもラインナップを広げ、2026年以降、日本や欧州、北米、中国などの市場に投入する予定だという。
同社によると第3世代FCシステムでは耐久性を従来比で2倍に高めディーゼルエンジンと同等のメンテナンスフリーを実現したほか、燃費性能を1.2倍に向上(航続距離プラス20%)、さらに製造プロセスの革新によりコストも大幅に削減したそうだ。
水素を燃料に電気を生み出す水素燃料電池は、大型トラックの脱炭素技術における本命とされてきたが、市場はかなり厳しい状況に置かれている。特に各社が市場展開を進めてきた北米市場では、FCEVトラックの開発をリードしていたニコラとハイゾンが、ともに2025年2月に経営破綻した。
破綻の理由については、いずれもキャッシュフローの悪化を挙げており、米国ではトランプ政権の政策もあってゼロエミッション技術に逆風が吹いている。現状で北米市場にFCEV大型トラックを提供するのは、「エクシェント・フューエルセル」を展開する韓国の現代自動車のみとなった。
日本や欧州のFCEVトラックも「実証」止まりで大規模に市場展開する段階ではなく、市場が形成されはじめているのは中国くらいだ。
パッカーグループは延期の理由について、水素燃料の供給インフラが整備されていないことを挙げているそうだが、ニコラは「ハイラ」ブランドによる水素供給も手掛けていたため、破産によりインフラ整備はさらに遅れそうだ。
両社ともFCEV大型トラックの製造を開始する予定は未定になっているといい、先行するニコラ/ハイゾンの破綻を経て、水素インフラの整備が進み利益を生む市場が形成されない限り、他のメーカーとしても製造開始に踏み切れなくなっている。
【画像ギャラリー】量産延期だけど…… トヨタとケンワースによるFCEV実証用大型トラック(9枚)画像ギャラリー
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