放送機材の輸送をメインで行なう鈴仙運輸(東京都品川区)が「発電機搭載トラック」を導入したと発表。製作したのは新潟の北村製作所だ。一体どんなクルマなのか? 実車を見学させてもらいました。
機材を降ろしたあとの「空いた荷台」を有効活用
鈴仙運輸は放送機材の輸送をメインで行なう運送会社。機材を目的(東京ドームや歌舞伎座、その他イベント会場)に降ろしたあとは、トラックの荷台は空になる。
荷主であるテレビ局は従来、撮影した映像や音声の現地での編集や休憩に簡易テントを利用していたが、近年は猛暑やゲリラ豪雨などが多発。簡易テントでは職員の健康や、身の安全を充分に守ることがむずかしくなっていた。
そこで着目したのが機材を降ろしたあとのトラックの「空の荷台」だ。鈴仙運輸では、荷主からの「荷台を使わせてもらえないか」との打診を受けて、荷台を貸し出すサービスを開始したという。
最初に貸し出したトラックは普通のドライバンの荷箱内にスポットクーラーを設置したもの。荷台には簡易的な断熱材を貼っていたが、夏は暑く、冬は寒かった。
そこで2台目は家庭用エアコンや照明を装備。3台目は荷主の「電気を使いたい」という要望に応えてコンセントを設置した。電気は中継先の電源車から供給を受けたが、山の上や地方など、電源車が来ない場所ではエアコンなどを使うことができないのが課題だった。
そこで今回、トラック単体でも設備を使えるようにするため車両に発電機を搭載したのが発電機搭載トラックである。同社の空調付きトラックとしては4台目となる。
外部からの電気供給なしでもエアコンやパソコンなどを連続70時間以上使用可能
発電機搭載トラックは、重量物である発電機を搭載しつつ、従来のトラックと同様の「3トン」という積載量を確保することを目標に製作された
積載量を確保するためベース車両はいすゞエルフで一番車格が大きい車両総重量8トン級車型「NPR」を採用。フェリー利用も考慮して全長は7m未満に抑えるようにした。
ボディは従来の簡易断熱構造から、冷凍車と同じ本格的な断熱構造に進化。放送機材は「カーゴテナー」と呼ばれるカゴ台車で運ぶことから、台車用のテールゲートリフターも搭載している。
前壁部にはエアコンの室外機のほか、発電機搭載により置き場所がなくなったスペアタイヤを搭載。左側面には出入り用のスライドドア&格納式ステップを搭載したほか、後端部には揺れ防止用の手動式ジャッキも搭載した。
室内は家庭用エアコン1台、LED照明、100Vコンセント2口×3カ所を搭載。これらの設備は発電機を稼働すれば使用可能で、もちろん外部からの電気供給でも使用可能だ。
室内にはカーゴテナーを固定するラッシングレール、分電盤や空気循環用の排気ファン、通信用ケーブル類を通す通線口を装備。室内寸法は内法長4380mm×内法幅1990mm×内法高2090mmで、カーゴテナー8台が収納可能だ。
発電機は左側ホイールベース間に出力6.25kVAのディーゼル発電機を搭載。燃費は2.12L/hで、トラックのエンジンと共用の燃料タンク200Lのうち150Lを使用可能とした場合、連続で約70時間が使用可能な計算だ。
ちなみに鈴仙運輸が自社で独自に実施した連続運転テストでは、エアコンや照明、パソコン2台を使用した状態で72時間の連続運転を達成。それでも燃料ゲージは1/4強しか消費していなかったそうで、低負荷なら連続100時間の使用も可能そうだ。
鈴仙運輸によると、発電機搭載トラックは依頼があればテレビ局以外でも利用可能。イベント会場や工事現場の休憩所や事務所、はたまた災害時は基地としても利用可能で、今後幅広い用途で活躍が期待できそうだ。
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