トラガール採用に高い壁! クロスワークの実態調査で浮かび上がった問題と課題

トラガール採用に高い壁! クロスワークの実態調査で浮かび上がった問題と課題

 物流・運送・建設などに特化した人材採用「クロスワーク」を提供するX Mile(クロスマイル)社は、物流業界の働き方に関する実態調査「クロスワークしごと白書」を作成している。

 このほどその第4弾となる女性トラックドライバーに関する独自調査を発表。それによると、現場の約6割が「トイレ」に課題があること、女性ドライバーの採用意欲を持つ会社が4社に1社しかないことなど、さまざまな問題と課題が浮かび上がった。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/写真AC・国土交通省、アンケート図/クロスワーク
引用元/クロスワークしごと白書2025(https://x-work.jp/journal/driver-working_04」

企業側とドライバー側 それぞれにアンケート

国土交通省が推進している「トラガール促進プロジェクト」
国土交通省が推進している「トラガール促進プロジェクト」

 女性トラックドライバーを「トラガール」と称して、国土交通省が「トラガール促進プロジェクト」を立ち上げたのはもう10年以上も前のこと。女性の活躍の場を拡げ、トラックドライバーを選択肢としてもらうことで、少しでもドライバー不足を解消しようということが主な狙いだった。

 しかしながら、当時も今もトラックドライバーは圧倒的に男性が多く、女性の比率は2~4%で推移しており、女性ドライバーは増えていないのが現状だ。

 今回のクロスワークの調査でも厳しい結果が出ており、このままでは「トラガール促進プロジェクト」は絵に描いた餅のままである。女性のトラックドライバーの活用はイメージ先行ではなく、もう一歩踏み込んだ分析や実効的な対策が必要な段階なのかもしれない。

 さて、今回の調査の概要だが、調査⽅法はインターネット調査、ウェブアンケート調査で、全国の「運送‧輸送業の経営者‧役員」185名、求⼈‧転職サイト「クロスワークの会員登録者」720名のトラックドライバーそれぞれを調査対象としており、調査期間は今年の3⽉12⽇~3⽉21日となっている。

そもそも女性のなり手が少ないという現実

 まず「女性ドライバーを採用する上で課題に感じていること」を企業側に聞いたところ(複数回答)、「応募が少ない」が75.6%で断トツのトップ。2位が「スキルや経験が持つ人が少ない」22.2%、3位が「業界のイメージが魅力的ではない」15.6%となった。

 つまり、企業が直⾯する⼥性ドライバー採⽤の最⼤の課題は「応募者数の少なさ」であることが浮き彫りになったわけで、実に75.6%もの企業がこの点を挙げている。また、「業界イメージが魅⼒的でない」や「アピール⽅法が不明」といった回答も多く、募集以前の魅⼒発信や業界全体のイメージ改⾰が急務であることが⽰唆されている。

 厚⽣労働省の「賃⾦構造基本統計調査」が⽰す通り、全産業の⼥性労働者⽐率が4割以上なのに対し、道路貨物運送業は約2割である。この業界全体の⼥性⽐率の低さが、応募者不⾜の背景にあると考えられる。

女性ドライバーを採用するうえでの課題。課題解決するためには働きやすい環境作りと魅力発信が求められる
女性ドライバーを採用するうえでの課題。課題解決するためには働きやすい環境作りと魅力発信が求められる

 次に「勤め先で女性ドライバーの採用を積極的に行なっているか?」を聞いたところ(単一回答)、「積極的に採用を進めている」は24.3%で1/4以下。逆に「今後注力する予定はない」36.2%、「過去は採用を進めていたが、現在は注力していない」12.4%、「現在採用を進めているが、近々ストップする予定」7.0%など、ネガティブな声が多い。

 「トラガール促進プロジェクト」と企業側の思惑には依然として大きな隔たりがある。その意味では企業の意識改革を求めるばかりでなく、その理由が何なのかを掘り起こしてみることも必要だろう。

女性の採用が進まない理由として、そもそも積極的に採用しようという企業が少ないという現状もある
女性の採用が進まない理由として、そもそも積極的に採用しようという企業が少ないという現状もある

 では、逆に⼥性ドライバーの採⽤を強化した企業にも聞いてみよう(複数回答)。

 積極採⽤中と回答した企業の理由としては、「ドライバー不⾜の解消」に期待する声が最も多かったものの、その割合は4割にとどまった。次いで、⼥性のスキルを⾼く評価する声や企業イメージの向上といった意⾒も挙がったが、これらは2割未満という結果になった。

 この結果から、⼈⼿不⾜が深刻な状況にもかかわらず、多くの企業が⼥性ドライバーの採⽤に消極的であるか、あるいは⼗分に注⼒していない実態が明らかになった。

 では、地域別の女性ドライバーの採用状況を見てみよう(複数回答)。

 地域別にみると、⼥性ドライバーの積極採⽤率は四国地⽅が33.3%で全国トップ。次いで、九州28.6%、中部28.1%、関東27.8%が続いている。

 いっぽう、東北地⽅では「積極採⽤」との回答はゼロという結果だった。このことは、同地域における⼥性ドライバーの採⽤が進んでいない現状を浮き彫りにしており、地域間での意識や取り組みに⼤きな差があることを⽰唆している。

 物流業界全体の⼥性活躍推進において、地域特性を踏まえた多⾓的なアプローチが不可⽋であることを⽰しているだろう。

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