ドイツ政府の資金提供で3年間にわたって続けられてきた自動運転トラックの研究プロジェクト「アトラスL4」が、ミッション完了を発表した。その成果は量産化に向けた基本コンセプトとして活用されるという。
日本国内では「何もしなければ2030年に34%の輸送力不足に陥る」とされるが、ドイツは既に10万人のトラックドライバー不足に陥っているといい、新しい社会インフラとして自動運転トラックに期待がかかっている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus
3年間のプロジェクトが成功裡に完了
高速道路や幹線道路を使った商用車の自動運転プロジェクトとして先駆的な研究開発を行なってきたドイツの「アトラスL4」プロジェクトの完了が発表された。
約150人のエンジニアによる3年間の研究開発プロジェクトを通じて貴重な知見が得られたといい、自動運転トラックの実用化・量産化に向けた基礎を築いた。
ドイツ政府の資金提供を受けたこのプロジェクトには、MANトラック&バス、ボッシュ、ミュンヘン工科大学、フラウンホーファー研究所、アウトバーンGmbHなど自動車産業とソフトウェア産業、インフラ分野と研究機関の12のパートナーが参画している。
物流ハブ間の輸送を担うSAEレベル4の自動運転トラックを高速道路で運行するなど、プロジェクトは全ての目標を達成し、無事完了した。
自動車の自動運転技術は、特に商用車領域で巨大な市場に成長することが期待されている。それだけに米国や中国などを中心にグローバルな開発競争が激しくなっているが、2021年にドイツで自動運転を可能にする法改正が行なわれ、同国が急速に追い上げている。
MANの「TGX」大型トラックをベースにした実証運行トラックには2024年に認可が与えられ、ドイツで初めて高速道路での完全自動運転走行が行なわれている。この走行を含めて全ての試験走行には安全のための人間のドライバー(セーフティドライバー)が同乗した。また、試験を通じて自動運転ソフトウェアは継続的にアップデートされたという。
車両には冗長ブレーキシステムやステアリング、車載ネットワークなど、レベル4に不可欠なコンポーネントが搭載され、技術監視のためコントロールセンターも稼働を開始した。
認証や暗号化通信といったサイバーセキュリティを含むリスク分析と、冗長性や劣化といった安全対策も評価され、この技術の量産化に向けた青写真となるプロトタイプが完成した。これによりコンソーシアムはプロジェクト目標を全て達成し、ミッションが完了した。
自動運転トラックを実用化する際の課題を見つけることも目標の一つで、アトラスL4プロジェクトの研究成果は、量産化のための基本コンセプトとして活用されるという。
自動運転トラックに期待される用途としては、例えば物流センター間のシャトル輸送などがあり、輸送効率の向上のほか、渋滞の回避や交通事故の削減にもつながるかもしれない。
また、トラックドライバー不足は世界的に深刻化しており、ドイツでは既にドライバー10万人が足りなくなっているそうで、トラックの自動運転によるドライバー不足の緩和は、「2024年問題」で輸送力不足に拍車がかかる日本も含め、各国政府も大いに期待するところだ。
アトラスL4プロジェクト完了を記念して、5月7日から8日にかけてデモ走行が行なわれ、プロジェクトの成果が最終プレゼンテーションで発表された。
【画像ギャラリー】Atlas L4プロジェクトで開発されたMANの自動運転トラック(3枚)画像ギャラリー
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