トラック輸送を鉄道や船舶に転換することを意味するモーダルシフトだが、今日では「2024年問題」の解消にも寄与するものとして、あらためて注目されている。
なかでも大量輸送に対応できる内航海運(中・長距離フェリー/RORO船)はその大本命だ。
国土交通省では内航海運の利用を促進しようと、このほど中・長距離フェリー、RORO船のトラック輸送に係る積載率を公表。積載率70%未満の航路も多いことがわかった。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真・表/フルロード編集部、写真AC、国土交通省
政策パッケージに基づき内航海運の積載率を調査
昨年6月2日のーに関係閣僚会議で取りまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」によると、2024年問題の解消等に向け、「トラック長距離輸送から鉄道や船舶へのモーダルシフトを強力に推進し、最適なモードを活用したモーダルコンビネーションの展開を図るために、~(中略)~フェリー積載率についての定期的な調査・荷主企業等への情報提供を行ない、利用可能な輸送力について周知することにより、鉄道や船舶の利用促進及び積載率の向上を図る」とされている。
これを受けて国土交通省海事局では、中・長距離フェリー、RORO船のトラック輸送に係る積載率の動向を7月から3カ月ごとに調査。直近の昨年10月~12月の実績ベースでは、積載率にまだ余裕のある航路があることが分かった。
ちなみに昨年7月から9月の実績ベースでも、概ね同様の積載率となっており、国交省海事局では、荷主・物流事業者の今後のモーダルシフト推進に向けた検討に活用してほしいとしている。
積載率70%未満であった航路は、
中・長距離フェリー:北東北~北海道(上り下り)、中京~東東北(上り)、阪神~北海道(上り下り)、阪神~北四国(上り下り)、北四国~北九州(上り下り)、阪神~中九州(下り)。
RORO船:東東北~北海道(上り下り)、中京~東東北(下り)、京浜~北四国(上り)、京浜~南中国(下り)、阪神~南中国(下り)、南中国~北四国(下り)、北陸~北九州(上り下り)、阪神~北九州(上り下り)。となっている。
なおRORO船については、現時点で協力が得られた一部事業者の数値を公表している。
#内航海運のメリット・デメリット
内航海運は大量輸送に強く、代表的な船舶で10トントラック約160台分、16キロリットル積みタンクローリ60台分に相当する貨物の輸送が可能とされている。
また、中・長距離フェリーやRORO船では無人航送ができるし、トラックドライバーが乗船してもその間は休息時間として扱われるため、2024年問題対策として、あらためて運送事業者に注目されるようになってきている。
また、CO2排出量も船舶はトラックの1/5と言われているから、環境にも省エネにも優れた輸送機関ではある。
ただ、トラックの利便性に比べ、内航海運は運行ルートや運航スケジュールが決まっており、天候や自然災害、何らかの不測の事態が起きたときに輸送できないケースが発生する割合が高い。
トラックは出荷先から届け先まで任意の時間にドア・ツー・ドアで輸送できるが、船舶の場合は一旦港で船積みするか船に乗り込む必要があり、これは着ターミナルでも同様である。
上表のRORO船のアンケート結果にもある通り、京浜〜東東北、京浜~阪神の上りが95~100%と極めて高い積載率を示しているように人気の高い航路があるいっぽうで、積載率70%未満の航路もあるわけで、「余裕があるからもっと内航海運を使おう」といっても、発荷・着荷の多寡は大都市圏と地方では当然違うし、道路が混んでいないので陸送のほうがメリットが大きいというケースも多いはず。
2024年問題を背景にモーダルシフトを強力に推進するのはいいが、積載率の低い航路を使ってもらうためには、単に呼びかけだけではなく、料金的な補助やターミナルの整備等、何がしかの工夫が必要なのかもしれない。
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