配送ドライバーの理絵さんが語る「買い占め」の困った余波
福岡県の運送会社で4トンのウイング車に乗っている理絵さんが、ふだん運んでいるのはトイレットペーパーです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、マスクと並んで今や世界的に品薄状態となっているトイレットペーパーですが、本当にパニックのようになって必死に買い求める必要があるのでしょうか? その流通を担うトラックドライバーの理絵さんに、実際の現場の状況をお聞きしました。
トイレットペーパーは、いわゆる「軽量カサ物」の荷物の代表格。この4トンのウイング車には、約10kgのケース(12ロール入りが8個)を通常240個積んでいる
「今回の新型コロナウイルスの影響で、物流でとても深刻なのはマスク不足とトイレットペーパー不足ではないでしょうか。マスクの方は専門外なのでよく分からないのですが、私がふだん運んでいるトイレットペーパーは、テレビやネットのニュースで伝えられている通り、在庫はたくさんあります。ただ、配送がまったく追いついておらず、店頭まで届かない状態になっています。
九州の方では本当に突然だったのですが、熊本県でトイレットペーパーが欠品になっているらしいという話を聞いた途端、熊本方面から大量の注文が入り、毎日のように熊本へ配送に行くようになりました。
しかも通常の配送にプラスして熊本からの大量の注文だったので、熊本で降ろして高速でバタバタと北九州の工場へ積みに戻り、福岡県内や近郊の県へともう1回、2回配送に行くような状態でした。
それが何日かすると九州だけではなく全国的にトイレットペーパー不足になってしまい、配送をしてもしても終わらない状態になり、しかも熊本もまだ落ち着いてない状態だったので何日も家に帰れなかったり、帰ってもお風呂だけですぐ出なければいけなかったり、トラックの中で寝ているような状況でした(汗)
スタンドのシャワーはコロナウイルスの影響で借りられないところも多数あり、私の場合は積み込みをする工場で借りられるのですが、ふだん長距離でスタンドのシャワーを借りている人はたまらないだろうなぁ……と思ってしまいました。
1日3回、4回走るのはザラで、うちの会社のトイレットペーパーの専属のトラックは9台しかないのですが、一番ひどい時には、その台数に対して67台分の積込指示書が送られてきたそうです。これには本当に笑いしか出ませんでした。
運んでも運んでも追いつかず、運べない分は次の日に日延になり、そして翌日には新たな注文が追加された状態の指示書がまた送られて来る……の繰り返しで、怒濤のような毎日を送り、日曜日も交代で仕事。
これでもまだ運びきれていません。もう先が少しずつですが見えてはいるのですが……。私はこの仕事を20年以上していますが、大型連休の前よりも消費税増税の前よりも忙しく、今回が過去一番だと思います。
きっかけはSNSでの「トイレットペーパーが品薄になる」という一言で始まったとのことですが、真偽のあやしいたったその一言で世間はこんなに大騒ぎになり、我先に買い占めに走り、本当に必要な人の手に渡らなくなり、いつもは1パックしか買わない人が店頭の品薄状態を見て、次はいつ買えるのか分からなくなり、不安になって2パック買う。そうすると店頭の在庫がまた品薄になるの繰り返しで、いつまでも注文が止まらない悪循環ですね。
工場には十分な在庫があります。でも、トラックが足りないんです。もう少ししたら店頭にも少しずつ商品が並んでくると思います。それまでは頑張ります。
なので、必要以上に買いだめするのは控えてもらいたいと思います。結局大変な思いをするのは末端の配送業者なんです。
この後にはきっとものすごい買い控えがあると思います。その時こそ本当に私達は死活問題なんです。安定した流通を望みます。どうか落ち着いてください」。
荷物は基本的に手積み手降ろし。4人の子供を育て上げた肝っ玉母さんの理絵さんでも積み上げるのに30分かかる。「買い占め」のせいで末端の配送ドライバーは大きな負担を強いられている
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