ヤマト運輸の「チーム集配」の新戦力 実証運行の現場を取材してきました
日野とトヨタが開発した超低床・前輪駆動のEVトラックを「ヤマト運輸が宅急便の集配で実証運行する」というニュースは、このブログでもお伝えしましたが、今日は、そのEVトラックが稼働し始めたばかりの現場を取材してきました。場所はヤマト運輸の板橋小茂根(こもね)支店。担当するエリアは、住宅が建て込み、狭隘な道路が多い、いってみれば日本の典型的な市街地です。
ヤマト運輸では、こういった住宅が密集する市街地において、これまでの1軒1軒集配車で集配先を回る「軒先集配」から、あらかじめ駐車場所を決めておき、その駐車場所から周辺への届け先には台車や自転車・リヤカーに載せ替える「バス停集配」に移行しており、さらに集配のニーズが高密度なエリアにおいては、「チーム集配」という方式にスイッチしています。セールスドライバー(SD)がワンマンで行なう「軒先集配」に対して、「チーム集配」は、エリア内に荷物の載せ替えを行なうためのドッキングポイントを設定し、SDが集配車で運んできた荷物を、フィールドキャスト(FC)と呼ばれる複数の人間が台車や自転車・リヤカーに載せ替え、チームで一気に配達を行なうというもの。この「チーム集配」の新戦力として将来を期待されているのが超低床EVトラックというわけです。
「チーム集配」の特徴は、その集配エリアの状況や集配個数の増減に応じてフレキシブルに対応できることがあげられますが、今日の取材では、SD1名とFC4名がチームを組んでいました。そのFC4名のうち3名が女性で自転車による集配を担当、残る1名の男性が台車による集配を担当。ちなみにFCは全員パート従業員です。
このエリアのドッキングポイントは5箇所で、台車を担当する男性FCは、営業所から第1ポイントまでは集配車に同乗していきますが、自転車部隊のFCは、あらかじめ決められた時間に第1ポイントに集合します。というのも、自転車部隊の女性FCは、ほとんどが近所の主婦で、その自転車も、自分の自転車の荷台に折り畳み式のコンテナを付けた、いわゆる「持ち込み車両」なんですね(笑)。従って、現地集合の現地解散、しかも不在率の低い朝8時から10時までの2時間が勝負なので、パートの主婦にとっても、FCの仕事は拘束時間も出勤時間も少なくて済むというメリットがあります。
第1ポイントで荷物を受け取ったFCは、自転車や台車でその荷物を届け先に届けながら、第2ポイントへ向かいます。ちなみに自転車が積む荷物は最大5個までと決められているそうです。第2ポイントでは、不在だった荷物を集配車の庫内に回収すると共に(これが結構多い)、第2ポイントのエリアで届ける新たな荷物を積んで、それぞれの配達先に赴き、さらに第3ポイントへと向かうわけです。
この「チーム集配」では、集配車から自転車や台車への荷物の載せ替えが1つのキーポイントになるわけですが、やはり超低床・前輪駆動のEVトラックは、荷室の床面の高さが440mmと、これまでのヤマト運輸のМPバンの860mmより420mmも低く、この載せ替え作業が格段にスムーズで効率的であることが分かりました。また、EVトラックの静粛性は特筆もので、特に住宅が密集する地域では、これが最もポイントが高いと言えるかもしれません。
この超低床EVトラックについては、5月18日発売予定の「フルロード」第9号で、そのハードを含めて詳報する予定ですが、どんなに革新的なハードであっても、現場のニーズに沿ったものでなければ「使えない」のがトラックの宿命です。その意味では、超低床EVトラックは、ヤマト運輸が推進する「チーム集配」と相性がよさそうだし、1年間の実証運行の評価が楽しみなクルマだと思いました。
東京都板橋区小茂根地区で実証運行をはじめたEVトラック。こちらはトヨタのトップマークを付けているので、名義上は「ダイナ」ベースとなろうか。もう1台の「デュトロ」ベースのEVトラックは、東京都町田市で5月から実証運行されるそうだ
やはり荷室の床面地上高440mmは、荷捌きの多い集配車には大きな魅力だろう
ドッキングポイントへ続々と自転車部隊のフィールドキャストが到着。自転車の荷台にはオリコンが取り付けられている
サイドに大きなスライドドアがあるので、自転車を横付けしての荷物の積み替えに重宝する
自転車部隊のフィールドキャストが第1ドッキングポイントを出発
フィールドキャストのみならず、セールスドライバーも集配を担当する。今日のような土砂降りの中でも宅急便の集配作業は黙々と続けられる。ちなみに今日の取材に際しては、ヤマト運輸のさまざまな部署の人が現場に立ち会ってくれました。全員ずぶ濡れになりながら取材の便宜を図って下さった皆さんにも感謝いたします
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