ダイムラートラック、ボルボ・グループ、セルセントリック、およびトヨタ自動車は、燃料電池の大型商用領域における協業に関する基本合意書を締結した。今後、法的拘束力のある正式合意に向けて協議を継続する。
セルセントリックはダイムラーとボルボが合弁で設立した燃料電池の子会社で、ここにトヨタが参画し、3社が対等な持分比率で共同事業を開始することを目指している。実現すれば3社の商用車向け燃料電池システムの開発、生産、販売においてセルセントリックは中核的な拠点となる。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/トヨタ自動車株式会社・AB Volvo・cellcentric GmbH & Co. KG
トヨタが燃料電池のセルセントリックに参画へ
トヨタ自動車は2026年3月31日、ダイムラートラックとボルボ・グループが2021年に合弁で設立した燃料電池子会社「セルセントリック」に出資し、燃料電池の大型商用車領域における協業に関して基本合意書を締結したと発表した。
必要な手続が完了すればトヨタはセルセントリックの合弁パートナーとなり、3社が対等の持分比率のもと協力関係を強化する。
お互いが培ってきた経験やノウハウを通じて、大型商用車向けの燃料電池システムの開発、生産、事業化を推進するとしており、具体的には、燃料電池の心臓部であるセル(FC)の開発や生産、およびそれと直接連動する構造設計や制御要素を一体的に運営するなど、両社の技術を生かした燃料電池システムを作ることを目指すという。
水素の化学反応で発電し、電気で駆動する燃料電池電気自動車(FCEV)は大型トラックを脱炭素化する際の本命技術とされる。大型トラックではバッテリーEV(BEV)の航続距離の短さやバッテリー重量による積載量の減少などが大きな問題となるためだ。
ダイムラーとボルボは、規模からいうと世界の商用車市場の2大グループで、基本的には競争関係にあるが、燃料電池事業では共同でセルセントリックを運営している。
大手トラックメーカーが運営するセルセントリックは大型商用車専用の燃料電池を開発しており、トラックのエンジンコンパートメントに(FCスタック2基が)ピッタリ収まるように設計できるためスペースや出力を最適化でき、小型車用のスタックを転用するより効率が高い。
ダイムラーとボルボは商用車技術に関して豊富な専門知識を有する。ここに、トヨタのセル開発・生産技術ならびに製造に関する経験が加わることで、セルセントリックとして一層の技術的優位性と市場競争力を獲得することになりそうだ。
なお、セルセントリックは燃料電池システムの開発・生産・販売のほか、水素のバリューチェーン全体にわたる業界団体やパートナーとの協力により、水素供給およびインフラ整備を積極的に後押しすることにも取り組んでいる。
水素を輸送部門の脱炭素化における重要なエネルギーの一つと位置づける3社は、セルセントリックを通じて燃料電池システムの技術革新を加速させ、水素社会の実現に貢献していくことにしている。
セルセントリックは今後も独立した法人として運営
発表によると、対等な株主構成を実現するためトヨタがセルセントリックの増資に参画する。セルセントリックは3社による合弁事業となっても独立かつ自律した法人として事業を継続し、大型商用車向けに加えて定置式発電機など、幅広い選択肢の提供を続ける。
また、ダイムラーとボルボは他のあらゆる事業分野において今後も競合関係を維持し、トヨタについても同様だとする。
いっぽう、燃料電池での協業により大型車両領域におけるボリュームとスケールが拡大し、イノベーションの加速と投資効率の向上が期待される。
水素技術は、黎明期より多くのプレーヤーが連携して進めてきた分野であり、協業が成長の基盤となっている。今回の協業も各社の強みを結集することで、商用化に必要な事業規模と投資効率を確保することを目的とする。
欧州の「グリーンディール」目標や日本の「水素社会」実現のためには、輸送分野を支える燃料電池技術を確立する必要があり、協業の拡大が一層重要になっている。技術開発と課題の共有により大型商用車向けを中心に燃料電池システムの持続的かつ実効性のある展開を目指す。
なお、今回署名した基本合意書は法的拘束力を持たない。今後、法的拘束力のある合意にむけて継続して協議する。実現にはすべての当事者とそれぞれの取締役会、および規制当局の承認が必要だ。


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