三菱ふそうトラック・バスは、光学機器メーカーのニコンと共創しトラック・バス向けの車載カメラシステムを開発したと発表した。自動運転システムや先進安全支援システムで欠かせないセンシング技術であるが、その狙いとは?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/フルロード編集部・三菱ふそうトラック・バス
トラック・バスの先進技術で活用が見込まれるカメラシステム
今回、三菱ふそうとニコンが共創して開発したカメラシステムは、望遠レンズと広角レンズを一体化し、AIによる画像認識の技術を活用することで、車両周辺や遠方にある対象物の検知精度を大幅に向上させるというもの。
車体が大きな大型トラックの場合、ドライバーが目視できる範囲は限定的であり、車両左側や車両前方直下などの死角になりやすい位置にいる歩行者やバイクなどの対象物の検知は、トラックの安全において重要である。
現在の自動運転や先進安全支援システムを搭載するトラックやバスでは、車両周囲の検知において、車載カメラやミリ波レーダー、LiDARなどから得られる情報によって周囲の状況を判断し、安全を確保しているが、従来のセンシング技術では検知範囲が狭かったり、使用環境により検知精度が落ちる可能性がある。
いっぽう、今回の車載カメラシステムでは、カメラを車両周辺に効率的に配置することで、車両の前後左右の全方位を360度確認し、AIで瞬時かつ的確に検知を行なう。
また、車両周辺の物体を広角レンズと望遠レンズで認識する際、同じ軸のレンズで捉えることができ、映像のズレがなく被写体を捉えることが可能なため、道路標識や車両周囲の歩行者などの対象物を認識する際の精度を向上させる。
これらにより、安全運転の確保におけるドライバーの精神的疲労の軽減が期待できるほか、カメラの視認性向上によって、車線維持機能(LKA)などの運転自動化機能の性能向上にもつながり、特に長時間の運転を伴う大型トラックのドライバーの疲労軽減にも貢献する。
三菱ふそうとニコンは、未来のトラックやバスに新たな価値を創出することを目指し、2020年から共創活動を行なっており、ふそうの追従型ごみ収集車の第2世代「eキャンター・センサーコレクト」には、LiDARの代わりを補う共同研究の第一弾となったカメラセンサー(今回の車載カメラシステムとは別物)を搭載した。
三菱ふそうは先進技術の開発を用いたトラック・バスのさらなる安全強化を目指し、今後も両社のさまざまな取り組みを続けていくとしている。
なお、今回の車載カメラシステムは、2025年1月7日(米国現地時間)より米ラスベガスで開催されるテクノロジー見本市「CES2025」にて、ニコンの出展ブースにて初公開を予定する。
■車載カメラシステムの主な特長
1.望遠レンズと広角レンズの一体化を実現
望遠レンズと広角レンズの一体化を実現し、遠方と周辺を同時に撮影することが可能。遠方と周辺の光軸が同一のために視差が生じないことから、AIが車両周囲の情報を画像認識する際に、遠方で認識した標識や他車をトラッキングしても、対象を見失ったり二重に認識したりする問題を減らすことができる。
2.車体への効果的な配置により、コストや故障率を低減
望遠レンズと広角レンズを一体化したカメラシステムを効果的に車体に配置することにより、車両に設置するカメラ台数を抑えることができ、従来の課題であったシステムコストや故障率などの低減が期待できる。
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