自動車の開発は伝統的に非公開で行なわれることが多いが、最近はオープンな手法も採用されている。例えばルノー・トラックスは都市物流の電動化を目指す「オキシジェン」プロジェクトにおいて、実験用トラックを試作し、物流現場に実践投入することで研究・開発を進めている。
そのオキシジェン・トラックの次のバージョンは、冷凍機と断熱ボディを備えた冷凍車となるようだ。非ゼロ・エミッション車の禁止が現実となりそうなオランダ都市部で、EVトラックによるスーパーマーケットへの安全な定温物流を実証する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks
「オキシジェン」トラックが第2世代に
フランスの商用車メーカーでボルボグループに属するルノー・トラックスは、オランダのスーパーマーケットの供給網に実験用のバッテリーEV(BEV)トラックの第2世代を投入することを2024年7月5日に発表した。
同社は実験用トラックを試作し、物流現場に投入して実証するという研究・開発手法を模索しており、現在は「オキシジェン」(=酸素)と名付けられた純電動トラックが、フランスのリヨンとパリで第一段階の試験を行なっている。
オキシジェン・トラックのセカンドバージョンで、プロジェクトは次の段階に入るようだ。スーパーマーケットチェーンのユンボ(Jumbo)やSVZとのパートナーシップのもと、新バージョンは冷凍ボディを備え、2024年10月よりオランダ・アムステルダムにて同国のルノー・トラックス子会社が試験を開始する。
ところで、自動車への依存を減らし、徒歩や自転車など人力の輸送手段との調和を図った移動を「ソフトモビリティ」(あるいは「アクティブモビリティ」)と呼び、特に欧州を中心に普及が進められている。
オランダの首都・アムステルダムはソフトモビリティのベンチマーク都市で、実験的なトラックを運行するには理想的な場所だ。
「オキシジェン」プロジェクトの新しいステージでパートナーとなったユンボはオランダ第2位の小売業者で、同国とベルギーに700店舗を構えるスーパーマーケットチェーンだ。SVZは同社のオランダ国内の店舗網に生鮮品などを供給している。
今回提携する各社にとって、環境インパクトを減らしたいという思いは共通しており、それぞれの専門知識を合わせることで都市ロジスティクスに対応し、オランダの「ゼロ・エミッション・ゾーン」でも運行可能な総重量26トンの実験用トラックを開発した。
当局の「ゼロ・エミッション・ゾーン」が事業者の死活問題に?
オランダでは2025年1月1日より、都市当局がゼロ・エミッション・ゾーンを指定できるようになる。指定区域は、BEVなどゼロ・エミッション車以外の進入が禁止される。都市部の排出削減に向けた取り組みの一つだ。
ルノー・トラックスはジオディスと提携してオキシジェンの第一段階を進めているが、対象はドライ物流(冷蔵・冷凍ではない常温の物流)だった。今回は騒音も排ガスも出さず、すべての道路利用者にとって安全な冷凍車による物流を目指す。
実験の期間は6か月で、倉庫からアムステルダム中心部のユンボのスーパーマーケットへの輸送を担う。
ルノー・トラックス(オランダ)のマネージングディレクター、ジェローム・バーテレット氏は次のようにコメントしている。
「持続可能な開発目標を達成するために、コラボレーションが力を発揮することは明らかです。私たちは都市ソリューションの脱炭素という同じ目標をもっています。アムステルダムは環境面において先進的な都市であり、先行プロジェクトを通じて私たちのミッションにも大きな価値がもたらされるでしょう」。
また、ユンボのフリート管理者、ウィルコ・マース氏は次のように付け加えた。
「ユンボは自然保護と環境インパクト低減にコミットしており、2030年までの炭素中立の実現を目指しています。店舗への配送という日常業務において、エネルギー消費を最小化し排出を削減することに常に取り組んでいるからこそ、ラストマイル輸送に特化した電気トラックの開発に参加できることを非常に嬉しく思います。
アムステルダムなどの都市はゼロ・エミッション・ゾーンを指定することが予想され、輸送を可能な限りクリーンで安全にすることは、今や事業を継続するために必須となっています。このプロジェクトは私たちが未来に備えるために、今まさに必要としている経験を提供するものです」。
いっぽう、SVZの財務ディレクターで都市部の輸送ソリューションの専門家、アーウィン・カイザー氏もこれを歓迎している。
「SVZはお客様の前進を支援することを心掛けています。オキシジェントラックにより、ゼロ・エミッションの輸送という未来に向けて新しい一歩を踏み出します。これによって、より安全な商品配送が確立されます」。
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