■軽商用車の電動化がもたらす効果は?
さて、その目論見は果してうまくいくだろうか? 「物流」というとトラックやトレーラのイメージが強いが、ラストワンマイルの物流をどうするかは、実はいま、物流業界では大きな関心事になっている。
その背景にあるのが宅配便の伸長、Eコマースの増大など、いわゆる小口配送の需要の拡大だ。
小口配送に用いられる車両は、現状では2t積みクラスなど小型トラックが多いが、普通免許で運転できる上限がGVW3.5tに切り替わったことで、これからは1.5t積み以下の車両にシフトしていくとみられる。
また小口配送の荷物は、いわゆる「軽量カサ物」が多いので、実際には1t積み程度で充分という指摘もある。
今回のCJPの取り組みの中で、最も注目されるのは軽商用車のBEV(電気自動車)化だと思うが、物流業者にとってもカーボンニュートラルは喫緊の課題になっているので、これは歓迎されるところ。CJPの取り組みを通じて培われたBEVの技術は軽乗用車にも展開されることになるだろう。
ただ、それでバラ色の未来が展望できるかというと、もう少しシビアに見たほうがよさそうだ。
CJPでは一気通貫での物流効率化をあげているが、そもそも法人のトラック運送事業者と個人が大半の軽商用車ユーザーとでは、ラストワンマイル物流を構築するのはむずかしいのではないか。となれば、むしろ既存の運送事業者が小口配送車両を軽商用車にシフトするかどうかがカギだろう。
ここでネックになるのが軽商用車の最大積載量だ。(BEV軽商用車であっても)上限の積載タイトルを取れたとしても、やはり350㎏というのは心許ない。いくら軽量カサ物といっても、運送事業者としては500㎏~1tの積載タイトルは欲しいところだろう。しかも運ぶのはカサ物だから荷室容積も欲しい。
実際に現在日本市場に導入されつつある海外製の小口配送用BEVは、軽商用車以上・小型トラック未満が主流だ。ちなみにBEV軽商用車の大先輩「三菱ミニキャブMiEV/トラック」は今年3月に生産を終了している。学ぶべきことは多いのではないか。
ところで、ここで改めてCJPが掲げるCASE技術についてみよう。ご存知のようにCASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化の英文の頭文字を取ったものだ。
CJPにスズキ・ダイハツが加わったことで、BEV軽商用車が一躍脚光を浴びることになったわけだが、むしろ電動化以外の要素にこそ着目すべきではないか。
軽商用車の枠に留まる以上、BEVだけでは運送事業者には大してアピールしない。新しい時代の軽商用車の市場を切り開くなら、多頻度少量輸送をより効率的に担う機能が必要だ。
コネクテッド、自動運転、シェアリング、この3つは、うまく機能させれば物流のラストワンマイルの達成に大いに貢献するはず。興味を持つ運送事業者もきっと多いことだろう。百年に一度の大変革は意外と身近なクルマから始まるのかもしれない。