全国津々浦々を走るトラックドライバーさんは、そりゃ、運転中にコワ~い体験をすることが多々あると思います。
「逆走車に遭遇した」「暴走族に取り囲まれた」「坂道でブレーキが効かなくなった」「運んでいる海上コンテナから謎の液体がこぼれ続けている」などなど、コワ~い体験は枚挙にいとまがないほどだと思います。
でも、コワ~い体験にはそっち系ばかりでなく、あっち系もあるのではないでしょうか。特に大型トラックは夜間走ることが多いですからね。以下は、現在はポールトレーラに乗っている女性ドライバーの「いろは」さんに聞いた話です。
まとめ/フルロード編集部、写真/フルロード編集部、AdobeStock
(2019年6月発売 トラックマガジン「フルロード」第33号より)
【画像ギャラリー】やだなーやだなーこわいなーと思ったんですよ……するとね……運転中のコワ~い体験「消えた人影の話」
■それは……夜間の重トレ輸送での出来事でした
私が精密機械の長距離ドライバーだった頃。夜間の重トレ輸送で、先導車と本隊(私)と後導車の3台で目的地に向かっていた時のことです。
片側一車線の海沿いの道を走っていました。右手は海、左手は生い茂った草むらで民家もありません。その時の先導車と後導車の2人は明るく気さくな人たちで、無線で気楽なやり取りをしながら走っていました。
途中に古いトンネルがあるのですが、手前の道がカーブになっていて、対向車が来ると通れません。そこで「少し先に行ってまーす!」と先導車が離れて行きました。
しばらくして先導から、「本隊からはまだ確認できないと思いますが、こちらの車線に歩行者がいます。少しふらついているので気を付けてください!」と無線が入りました。
私も後導も「了解!」と返事をして、「こんな時間にこんなところを歩いてどこに行くんだろう?」、「酔っぱらってたのかなー?」、「女の人だったよ」と、先導と後導の会話を聞きながら走っていました。
■こんな時間に歩いてどこに……そんな事を考えながら走っていたんです
低速でトコトコ、トコトコ。トンネルの手前まで来ました。「本隊確認! トンネル、OKです!」と無事に通過して、しばし……、「女の人なんて歩いてなかったじゃん」と後導。
それを聞いて私もそうだと思いました。「歩行者あり」の報告を受けてからトンネルまで、暗いですが見通しは悪くありません。何もない道に車道を歩く人がいればわかるハズです。
「本隊も歩行者を見てないですよね?」と後導。「いなかったですね、誰も」と返しながら、今来たばかりの道を思い返していました。右手は海、左手は草むら、脇道は無し……。
暫く沈黙の後、「じゃあ、途中で曲がったんだね!」と明るく言う先導。「いや、脇道なんて無かったよね」と冷静な後導。さらに重ねて「脇道ありましたよね?」と先導が私に聞きましたが、また思い返して「無いです」と答えました。
その後は、「本当に見たのか?」、「いた。見た」、「いなかった」と二人のやり取りが続き、ビビりな私はそっと無線のボリュームを切りました(笑)。
何だったのかは今でもわかりませんが、見たほうが良かったのか、見なくて良かったのか……。不思議で少しコワい思い出です。