ボルボトラックスは新しい安全機能としてトラックの自動速度制限機能「セーフティ・ゾーン」を導入する。コネクテッド技術とジオフェンシング技術により、事前に特定のエリアの最高速度を設定するもので、トラックメーカーがこうした機能を導入するのは初めてだという。
制限エリアに侵入すると運行管理者が設定した速度まで自動でブレーキが掛けられ、これを超える加速はできなくなる。ただし、ドライバーによる手動のオーバーライドは可能だ。
ボルボは交通事故ゼロというビジョンの実現に向けて継続して安全システムの開発に取り組んでいる。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
ボルボが「自動速度制限」機能を大型トラックに導入
2025年6月10日、スウェーデンのボルボトラックスはトラックの安全性をさらに向上するための新しいコネクテッドサービスを開始すると発表した。事前に定義されたエリア内での「自動速度制限」機能だ。
混雑した都市部の道路でのトラックの安全性向上、運送会社のトラック駐車場内などでの事故防止、誤って速度超過してしまうことへのドライバーのストレス軽減……。トラックの制限速度を自動で切り替えるボルボの「セーフティ・ゾーン」機能は、こうした部分で利益をもたらすという。
ボルボによると、同種の機能を導入するのはトラックメーカーとしては初めてだ。セーフティ・ゾーンにより運送会社はトラックごとに事前定義されたエリアで制限速度を設定でき、当該エリア内でのトラックの走行速度を一定以下に抑えることができる。電子地図と位置情報を活用した、一般に「ジオフェンシング」と呼ばれる技術だ。
欧州や日本など多くの地域では、そもそも大型トラックに対する速度制限装置の搭載が義務化されており、一定の速度(法定速度)でスピードリミッターが作動する。新サービスはジオフェンシング技術によりリミッターが作動する速度を動的に切り替えるものとなる。
制限エリア内ではエンジン制御により設定値を超える速度への加速ができなくなるほか、超過速度でエリアに入った場合はトラックが自動ブレーキをかけて制限速度まで減速する。
新機能についてボルボトラックスのプロダクトマネージャー、ヨハン・ルンドバーグ氏は次のように説明している。
「このサービスにより運送会社は特定の場所で車両の運行速度を低く抑えることができます。例えば港湾内、物流センターの敷地内、歩行者や交通量が多く事故の危険性が高いエリア、都市中心部や学校の近くなどを制限エリアに設定できます。
サービスの目的は道路交通をより安全にし、ドライバーのストレスを軽減することです。ボルボはグループの長期目標である交通事故ゼロというビジョンに向けて安全システムを継続的に開発しています」。
「セーフティ・ゾーン」はどのように機能する?
運行管理者はまずデジタル地図上でゾーンと制限速度を設定する。この設定はトラック1台ごとに制御でき、インパネのディスプレーを通じてドライバーも確認できる。制限速度は20km/h以上で設定でき、トラック1台当たり同時にアクティブ化できるゾーンは最大300か所となる。
なお、セーフティ・ゾーンはサブスクリプションサービスで、ボルボのデジタルサービスインターフェースとしてコネクテッド機能を提供している「ボルボ・コネクト」の一部であり、ボルボ・コネクト・ポジショニングの利用が前提となる。
利用可能なのは大型トラックのボルボFH、FM、FMX(ユーロ6適合の内燃エンジン車)と電動ドライブライン搭載車。2022年秋以降に生産されたトラックが対象で、同社で初めての電気駆動専用シャシーとなるボルボFMローエントリーも含まれている。新車トラックでは2025年6月から、既存トラックについては9月から利用可能となる。
具体的な「セーフティ・ゾーン」の仕組みは次のようなものだ
・運行管理者がボルボ・コネクトで地図上のゾーンとルールの組み合わせを設定する
・トラックに搭載するテレマティクスユニットがGPSによる位置情報を送信するとともに、管理者による指示を受信する
・ゾーンに入ると、トラックは制限速度に達するまで自動的にブレーキをかける。自動ブレーキはディスプレーを通じてドライバーに通知される
・ゾーンの内部では設定速度を超えて加速することができなくなる
・ただし安全のために一定の速度で走ったほうが良いケースもあるため、ドライバーはアクセルペダルをキックダウンすることでシステムをオーバーライドし、ゾーンの制限速度を無視することが可能
・クルーズコントロールはゾーンの制限を超える速度に設定することはできない
・ソーンへの進入・離脱、速度違反、オーバーライドなどのイベントは運行管理者に通知される
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