最新のトラックは安全機能も充実している。ダイムラーが発表した新しい安全システムは、トラックが検知した道路上の危険を、自車だけでなく「他車にも」知らせるというものだ。
コネクテッド機能による危険情報の共有は乗用車では既に実用化されているが、トラックでは初めてだという(ダイムラー調べ)。トラックはコネクテッド機能の普及が進んでおり、乗用車とも情報共有ができるようになれば道路はもっと安全になりそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
トラックでは初めての安全システム
ダイムラー・トラック(ドイツ)に所属するメルセデスベンツ・トラックスは、2025年3月6日、トラックに搭載する新しい安全機能「コネクテッド・トラフィック・ワーニング」を発表した。
道路上の危険を車両が検知し、ドライバーに警告することで安全性を向上するシステムだが、従来の安全機能と違うのは、自車のみならず他車にも危険を知らせることができるという点だ。
対応する「危険」の種類は事故、天候、道路工事、逆走車、滑りやすい道路などで、今後の機能追加に向けた開発も進行中だという。
配車係や運行管理者と連絡を取り合う必要がある商用車は「コネクテッド」機能の搭載では乗用車より先行している。道路を走行中のトラックが危険を認識し、オープンなシステムを通じて乗用車とも情報を共有できるようになれば、道路の安全性は格段に向上しそうだ。
ダイムラー・トラックのエンジニアでコネクテッドアプリケーションの開発責任者であるシュテファン・エンゲレン氏が新機能に関する10の疑問に答えている。
新安全システムに関する10の疑問と回答
1.コネクテッド・トラフィック・ワーニングとは
コネクテッド・トラフィック・ワーニングはメルセデスベンツの新型トラックにおいて、「トラックライブ」サービス通じて利用できる新機能だ。クラウド、またはインフラオペレータ(ドイツの場合、連邦高速道路会社のアウトバーンGmbHなど)とコネクテッド機能で接続した車両が、現在のルート上にある危険を互いに警告できるようになる。これにより、たとえばカーブの先や霧の中などドライバーの視界の外にあって目視できない危険を、ドライバーは事前に認識することができる。
2.どのように機能する?
トラックに搭載する安全装備が危険な状況を検知すると、コネクテッド機能を通じてその情報がクラウドに送信される。付近を走行中の受信機能を備えたクルマにクラウドから警告が発せられ、ナビゲーションマップなどに表示する。現在のルート上に危険がある場合、ディスプレイと音声メッセージによりドライバーに警告が伝えられる。また、他の車両メーカーやインフラ事業者、道路建設会社などサードパーティのプロバイダーがメッセージを追加することも可能だ。
3.利用に必要な条件
この機能を利用するにはナビゲーションサービスを搭載する同社の「マルチメディアコックピット インタラクティブ2」と「トラックライブ」契約を備えたトラックが必要だ。車両とクラウドの通信にはモバイル回線を用いる。
4.システムが対応する危険なシチュエーション
現在システムが対応している危険な状況は次の通り。
・事故
・故障車
・道路工事
・危険個所
・緊急ブレーキの作動
・逆走車(自車/他車)
・大雨
・滑りやすい道路
・霧
5.事故防止にどのように役立つのか?
危険な状況がドライバーの直接視界に入る前にシステムが警告し、事前に状況を認識することでドライバーは早い段階から危険に備えることができる。余裕を持って対応することで緊急ブレーキの作動を回避できるなど、安全運転に繋がる。
6.開発したのは誰?
先進エンジニアリングと車両開発のグローバルチームが開発に当たった。チームは最初のマイルストーンに続いてさらなるアプリケーションの開発に取り組んでいる。
7.他メーカーの車両でも動作する?
このシステムはオープンであり、他の自動車メーカーとも互換性がある。またアウトバーンなどのインフラ事業者もコネクテッドを通じて道路工事の情報などを提供できる。
8.競合他社にも同様のシステムがある?
ダイムラーの調査では、トラックメーカーとしてこのようなシステムを提供するは初めてだ。乗用車では道路上の危険を共有するシステムは既に存在しており、トラックが検出した危険は乗用車とも共有される。
9.将来の可能性
道路上の危険を早期に警告することは、交通事故ゼロというビジョンを前進させるために様々な機会を提供する。危険に対してドライバーがより適切に対処することで急ブレーキも回避できる。
10.費用は?
コネクテッド・トラフィック・ワーニングの使用は、3年分がナビゲーションシステムの価格に含まれている。その後は1年ごとに延長オプションがある。
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