ドイツのMANは「最後の世代」のディーゼルエンジンを製造開始した。ディーゼルエンジンを実用化したことで知られる同社だが、かねてより公表しているとおり、電動化を推進するため商用車用ディーゼルエンジンの新規開発は、今後は行なわない。
2025年モデルの大型トラックなどに搭載する新型の「D30」型13Lエンジンは、クラス最高効率を誇るといい、ニュルンベルク工場で製造される。同工場では並行してバッテリーの製造も開始する予定だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus AG
「最後の世代」のディーゼルエンジンを製造開始
フォルクスワーゲンの商用車部門・トレイトングループに属するドイツのMANは2025年2月24日、同社のニュルンベルク工場(ドイツ)で新型の13L級高効率ディーゼルエンジンの製造を開始したと発表した。
既に公表されているとおり、新型の「D30」型エンジンは同種の商品として「最後の世代」となり、後継機の開発計画はない。
MANは蒸気機関の代替として圧縮着火式内燃機関を発明したルドルフ・ディーゼル博士と共同で、後に「ディーゼルエンジン」と呼ばれることになる高効率エンジンを実用化したことで知られている。同社のニュルンベルク工場は、商用車用ディーゼルエンジンの製造で100年を超える伝統を持つが、その歴史もD30型エンジンで最後となる。
ニュルンベルク工場では商用車用バッテリーパックの量産が始まる予定で、今後はエンジン製造からバッテリー製造へ段階的に切り替えて行くものとみられている。
とはいえ新型エンジンの製造にむけてMANは多額の投資を行なっている。ニュルンベルク工場と、関連部品(クランクシャフト)を製造するザルツギッター工場への投資を合わせて、設備投資に2.5億ユーロ(約400億円)を投じた。
その新型エンジンは、トレイトングループの各ブランドが協力して開発したもので、燃料消費およびCO2排出量に新水準をもたらすという。連結総重量40トンのMAN「TGX」および「TGS」(の2025年モデル)に標準搭載されるエンジンだ。
ニュルンベルク工場での生産を拡大するため、高度なスキルを持つ160人が3シフト体制でD30型エンジンの製造に取り組む。これにより年間で約5万台のエンジンを生産できるという。
エンジンと電気、「駆動」の中心
先述の通り、MANが新規開発する商用車用ディーゼルエンジンはこれが最後となり、後継世代の計画はない。すなわちD30型は内燃機関から電気駆動への「橋渡し」を担うものとなる。
同じニュルンベルク工場で2025年春よりバッテリーの量産を予定しており、バッテリーと新型エンジンをほぼ同時に量産開始し、平行して製造する。当面の間はMAN商用車の駆動系の中心となる部品(エンジンとバッテリー)は、どちらもニュルンベルクで製造されるようだ。
トレイトングループの専門知識を結集したD30型エンジンは、世界でも最も革新的な商用車エンジンの一つだといい、効率(燃料の持つエネルギー量に対するエンジンの軸出力の割合を示す「正味熱効率」)は最大50%を超え、同クラスで最高の燃費を誇る。
MAN製エンジン・ギアボックスの組み合わせで全体を最適化した「パワーライオン」ドライブラインを搭載する「TGX」トラックに空力対策を施した場合、前世代と比較して燃料消費とCO2排出量は平均して5%少なくなるという。
D30型は従来のD26型およびD15型ディーゼルエンジンを置き換えるもので、380~560hp(2100~2800Nm)の6つの出力レベルで提供される。
MANのCEO、アレクサンダー・フラスカンプ氏はプレスリリースの中で、2つの駆動技術とニュルンベルク工場について次のように述べている。
「2030年までに当社が製造する車両の半分にゼロ排出の駆動系を搭載する予定です。しかし、電動化への移行の過程では効率的な内燃機関が必要とされます。ニュルンベルクではその両方の技術に投資し、2つの強力な基盤を構築することで、この場所の『未来』を約束します。
これが当社が雇用を維持する方法であり、この道を進み続けるためにバイエルン州政府からの支援にも期待しています」。
【画像ギャラリー】最後の世代の「D30」型ディーゼルエンジンと同機を搭載する「TGX」2025年モデル(7枚)画像ギャラリー
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