自動車運送事業者に義務化されている乗務前・乗務後点呼は、これまで対面方式が原則であったが、4月1日に制度改正が行なわれ、同日よりインターネット通信を用いた非対面点呼「遠隔点呼」の申請がスタート。
7月1日より機器・システム・施設などの要件を満たした営業所同士であれば遠隔点呼が可能になる。
遠隔点呼は行政機関に申請する手間がかかるが、コロナ禍における接触感染の低減や運行管理の効率化などのメリットが見込まれる制度。あらためて遠隔点呼とはなにか? その概要をまとめた。
文/フルロード編集部 写真・イラスト/フルロード編集部・全日本トラック協会(トップ画像=「点呼をIT化して業務の質を高める」資料より)・国土交通省(イラスト=遠隔点呼リーフレットより)
【画像ギャラリー】運管点呼の一元化が可能に!! 運行管理の効率化が図れる遠隔点呼制度がスタート(6枚)画像ギャラリー■IT点呼と遠隔点呼
トラックやバスのドライバーによる飲酒運転や体調不良に起因する重大な事故が起こるたび、点呼時の酒気、疾患、疲労といった確認の重要性は増し、アルコールチェックの義務化(営業ナンバートラックは平成23年、白ナンバーへは令和4年4月から義務化)を始め規則は強化されつつある。
その反面、運行管理(者)への負担は増加し、特に始業時間や就業時間の不規則なトラックドライバーの管理は、人材や資金面で限られる中小企業であるほど難しいものとなっている。
こうしたなか国交省は「運行管理高度化検討会」を令和3年に設置し、従来、Gマーク(全日本トラック協会が安全面で優良な営業所を認定するマーク)を取得した営業所や、安全への取組が優良と認定された営業所間のみ可能であった「IT点呼」を、すべての自動車運送事業者に拡大させる「遠隔点呼」の制度化が行なわれた。
遠隔点呼では、同一業種(バスならバス事業の営業所)における要件を満たした営業所・営業所の車庫、グループ企業(資本比率100%の子会社およびその親会社)の営業所・車庫間でインターネット通信を用いた点呼が可能に。
これにより、運行管理者点呼等を一元化することができ、一方の営業所・車庫では点呼業務を完全に無くし管理業務の効率化が図れるものとなっている。
なお、点呼執行そのものは選任された補助者も行なうことが可能だが、総点呼数のうち1/3は運行管理資格者が行なう義務がある。またIT点呼では運行管理者が行なっても補助者点呼の扱いとなっていたが、遠隔点呼では運行管理者点呼としてカウントされるようになる。
■必要になる設備などの要件は?
遠隔点呼はIT点呼に比べ高度な点呼機器を使用することが条件となる。
機器・システムとしては、カメラ・モニターを通じ、運行管理者がドライバーの表情、酒気の有無、疾病、疲労、睡眠不足等の状況を確認できること。アルコール検知器の結果をリアルタイムに確認、記録・保存できること。
点呼者及び被点呼者のなりすまし防止のための生体認証デバイス。日常点検の確認結果を確認できる機能。伝達事項確認機能。点呼結果及び機器故障記録が修正・消去できない電子記録として残ることなど。
施設としては、カメラ・モニターを通じドライバーの表情が明瞭に確認できる環境照明度の確保。機器の使用状況を確認するため点呼場に監視カメラの設置。通信や通話が途絶しないような通信環境の確保などとなっている。
また、運用上の遵守事項として「運行管理者等の遵守事項」「非常時の対応」「情報共有について」といった事項も守らなくてはならない。
遠隔点呼の実施には、こうした機器・システム、施設・環境、遵守事項といった3つの要件を満たし運輸支局長、運輸管理部長または陸運事務所長への申請を行ない、承認を受ける必要がある。
なお、国交省は乗務後の点呼において、AI(ロボット等)などを用いた自動点呼「(条件付き)乗務後自動点呼」の制度化も進めており、今後実施が予定されている。
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