追想記(ニニ・ロッソの調べに誘われて 其の二)
店内に入って辺りを窺うが、食事をするところはなく、それどころか弁当さえ売ってはいなかった。やむなく、土産物を眺めて回ったのだが、さすがに秋田県や山形県の特徴のある物がそろっていたと思うが、どんな品物があったのかは覚えていない
ただ、私の目を惹いたのが「フキ」を使った製品が多くあったことだった。「フキ」って、山形県の名産? と、思ったのだが、自分ではそんな記憶はなかった。というか、フキの名産がどこなのか知らなかった。取り敢えず、フキ羊羹を一点だけ家内への土産として買い求め、店内を後にした。
外に出ると、やはりニニ・ロッソのトランペットが流れていた。トラックに乗りこんだが、後ろ髪を引かれる気分で出発する気分にはとてもなれなかった。
そして「夕焼けのトランペット」が流れてきた時、思わず、今度は口ずさむではなく、ニニと一緒に歌っていた。
♪リコールドソノデュナトロンバ インクェルコルティネセンサソーレ
エッソナーバ エッソナーバ トゥッピアンゼービ♪
♪アナタトゥリセットデュナトロンバ メンタルティオセンサパローレ
エッソナーバ エッソナーバ トゥッピアンゼーボ♪
この歌詞は何度も聴いているうちに自然に覚えたものなので、どこまで正確なのか分らない。だけど、そんなことに関係なく、店内に入る前の一回目に聴いた時に心の扉を開けられ、そして、二回目の今度は懐かしさが一気に心の中に流れ込み、溢れ、流出し、感情そのままに思わず歌っていた。
そして、同様に「さすらいのトランペット」「さすらいのマーチ」と、歌詞の付いた曲は思いっ切り歌った。
当時、ニニ・ロッソが存命で、特に日本での活躍が目覚ましい時期であっても、ラジオから頻繁に流れてくるということはあまりなかったので、渇望していた。
それからと言うもの、本庄経由で盛岡方面に行くとき、もちろん、秋田や青森に向かう時も、必ずこの店に寄っては、ニニ・ロッソを聴いていた。
当時、九州に残してきた借金を返すのに金欠状態だった。そのために、現金でもらっていた運行費を高速に乗らずに節約し、食費やタバコ代に充てていた。そのような状態での仕事は、辛く苦しかった。そんな私にとって、いわば心のオアシスだった。
だが、閉店間際は聴くことが出来ても、遅い時間だと聴くことは出来なかった。その時は、ひどくガッカリしたものだ。そんなことを数回繰り返した後、会社を替わり行くこともなくなっていたのだが、しばらく間があいて行ったときは、家内が一緒だった。そして、それが最後になってしまった。
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