元ベテラン運転手 トラさんの「泣いてたまるか」No.81
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寄稿・連載
追想記(並走車13)
スピードをダウンしてくれても、すぐに前に入れるわけではない。追い越しをかけてから、間もなく後ろに着いた車が気になりだして、どれくらいの時間なのか、迷惑をかけたという気持ちと、早く左側車線に戻りたいと言う気持ちが、お尻の辺りをむずむずさせていた。やっとの思いで戻った時の安堵感は、言うに表せない。
高速道路でよく見かける光景で、追い越したトラックに車間距離を取らずに、一刻も早くとすれすれで左側車線に戻るトラックがいる。後ろに気を遣っているあの気持ちが解らぬでもない。
その時は、特に登り坂なのでトラックの中には速度を落としたために、加速がつかずにやむなく左側車線を走らざるを得なかった者もいるだろう。同じドライバーとして、彼らの気持ちが痛いほどわかる。そのことを考えると、数100メートルの我慢が出来なかったのか、自責の念に駆られたのは言うまでもない。
戻った時には、加太トンネルが100メートル程度に迫っていた。何のことはない、この登り坂の半分程度は私が右側を走る車両の邪魔をしただけに過ぎなかったのだ。
前々回のブログの中で、「そうは言ってもねえ」と、書きました。実際多くのトラックドライバーの方がそうなのです。高速道路で、前を走っている遅いトラックに、また、遅い乗用車に追いついた時、つい、追い越しを考えてしまう。その結果が、私の加太トンネルの登坂と似たような、否、同じ結果をもたらしているのです。事実、私もその経験を何度も繰り返して、自分自身の我儘に過ぎないということを自覚させられてしまった。
そう、それは自分が出しているスピード感が最適なスピードという自然に身についた、無意識の思い込みがもたらした結果でしかないということだ。
そして、それは自分自身が計算していた、時間対距離の関係からも、明らかになっている。次回はその計算を示したい。
トラさんのブログ「長距離運転手の叫びと嘆き」
http://www.geocities.jp/boketora_1119/
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