ダカールラリーに2011年大会で20回連続完走を果たした日野自動車は、2012年大会を新たな歴史の幕開けとすべく、2004年大会以来8年ぶりに新型レーシングトラックを投入。参戦クラスを従来の市販車クラスから改造車クラスに移し、総合上位入賞を狙うとともに排気量10リッター未満クラスの3連覇を目指すとしているが、このほどその新型レーシングトラックが公開された。
新型レーシングトラックは、「日野レンジャー」の4輪駆動車型をベースとし、排気量10リッター未満クラスのライバルを凌駕するパフォーマンスを発揮するとともに、大型車を含めたトラック部門で総合上位に入賞することを目標に開発。
開発テーマのひとつは、走破性能の向上で、このためフレームを全面的に見直し、組幅を広げて車体のねじれ剛性を高めた。また、重量物を重心近くに集めるために、市販車では運転席の下にあるエンジンを、後方に移動させて低い位置に搭載し、低重心なミッドシップレイアウトを採用。また、キャブは従来のフルキャブからショートキャブを選択し、重量を軽減。リヤボディも根太構造(サブフレーム)を廃したうえで、従来のパネル張りから軽量な化学繊維製の幌にするなど、車両全体で前回比300kgに及ぶ軽量化を達成している。これらの改良に合わせ、ブレーキの前後バランスを見直すなどブレーキ性能の向上も図られた。
もう一つのテーマは、冷却性能の向上である。アフリカから南米に舞台を移したダカールラリーは、パウダー状の砂や急な傾斜など、走行抵抗のより大きい路面を高い気温の中で走行するため、冷却性能の高さが求められる。新型レーシングトラックでは、冷却能力の高いアルミ製ラジエーターを採用。ラジエーターと冷却ファンの距離が、ミッドシップ化で離れたためその空間をシュラウドで連結。インタークーラーは、通常のラジエーター前面位置からリヤボディ前端上部に移設。ラジエーターとインタークーラーの位置を別にし、効果的に走行風を直接集めることにより冷却性能を向上させた。これらの改良点はすでに、ラリーモンゴリア2011(8月8日~15日開催、モンゴル・ウランバートル発着)でのテスト走行で効果を確認している。
新型レーシングトラックは、菅原照仁がステアリングを握り、菅原義正が駆る車両は、前大会で菅原照仁がクラス優勝した車両をベースに改良。以前、リヤボディの外板をドライカーボンパネルに変更するなどして約200kg軽量化した車両を、キャブ周辺でさらに軽量化。そのほか、オイルクーラーをリアボディ前端上部へ移設し、冷却性能を向上し戦闘力を高めている。
ダカールラリー2012は、2012年1月1日にアルゼンチンのマルデルプラタをスタートし、1月15日にリマにゴールする予定。15日間にわたる競技期間の総走行距離は約1万km。人とクルマの耐久力が問われるレースとなるが、「日野チームスガワラ」は、日野レンジャー2台体制で参戦し、総合上位入賞と排気量10リッター未満クラス3連覇を狙うことになる。
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