新型日野デュトロの開発わ取りまとめた熊坂正弘チーフエンジニア
こだわりを持って開発を進めた安全性の追求
キャブの変更に合わせて、安全性に関してもこだわりを持って開発を進めてきました。まずはピラーの太さですが、これはワイドビューピラーと称していますが、他社さんに比べても一番細いピラーです。目の間隔より細いピラーにすることで、横断歩道などを渡っている歩行者などが非常に確認しやすく、死角が無いという特徴があります。ナロー/ワイド共に採用しています。
またワイドビューミラーと称していますが、2面鏡のミラーです。これは通常の一面鏡の下に、視界を非常に広く確保できるワイドビューのミラーというのものを、運転席だけでなく助手席両方に標準で設定しました。従来は、クルマの後方を中心に確認しやすくなっているのに対して、これは横の方まで広く見られるようにしたもので、これによって並行して走るクルマや後ろから近づいてくるオートバイや自転車、それからコーナーを曲がるときに歩行者が横断歩道を渡っていないかというところが非常に確認しやすくなっています。
また、VSC(ヴィークル・スタビリテイ・コントロール)を世界で初めて小型トラックに採用しました。VSCと言いますと、雪道とか凍結路の滑りやすいところでその効果を発揮しますが、トラックの場合ですと、もう1つ転倒という事故があります。こういった事故の抑制にも寄与するということで、今回VSCを採用しました。小型トラックはホイールベースが短くてクルマの重量が軽く、動きが早いため運転者が追従できなくなるということがあります。我々の方でも実験を繰り返していますが、例えば時速43キロで30Rコーナーに制御なしで侵入するとします。もちろん実験ですから倒れないようにアウトリガーをつけていますが、気づいた時にはもう横転モードに入っているというシチュエーションをまずは作りました。次にVSCを効かせて、先ほどのスピードよりも少し早い時速47キロで同じコースに入ってくると、Gだとかハンドルの舵角を検知して、横転はもちろんコースアウトするとこともなく安全に走行ができるようになっています。。
また、ヘッドランプですが、これまでワイドキャブ車にディスチャージヘッドランプを設定してございましたが、今回は標準キャブの方も設定しました。やはりディスチャージヘッドランプは非常に明るい視界がいい、さらにクリアなレンズを採用しているのでデザイン的にも優れているということがあります。
騒音対策・排ガス対策・燃費向上対策について
騒音に関しては、アイドル車外音の低減を図りました。夜間・早朝など住宅街の配送等で静かにしてほしいというユーザーのご要望がありました。これまでもいろいろなアイテムを盛り込みながら、静粛性を高めているのですが、今回はフルモデルチェンジということで、コストも掛け、エンジンそのものだけではなくカバー類を追加するということもやっておりまして、、クラストップの静粛性を実現しています。
排ガス対策については、尿素を使わないDPRシステムがあげられます。やはり小型トラックはホイルベースが短く、またいろいろな架装をしますので、スペース的な制約などが無いようにしたいということから、現行のシステムの変更でやりたいということで進めてまいりました。その結果、今までとほとんど同じレイアウト、架装性がキープできることを確認できております。やはり尿素でやりますと、尿素タンクやSCRといった仕組みが必要になる、それで架装上の制約が多く出てしまうというところがあります。もちろん尿素水フリーには補給の手間などの煩わしさがないことは言うまでもありません。
燃費の向上については、このあと山口チームエンジニアからハイブリッドについて説明がありますが、やはり一般ディーゼルエンジンの方でも燃費を良くしたいということで、今回エンジンの開発の方には、厳しい排ガス規制を通す、それから音も下げる、しかも燃費もよくしろということで、相反する非常に難しい課題を与えてやってきました。その結果が、走り方にもよりますけど、郊外パターンの3トンの平デッキで7%~10%くらい燃費向上が図られています。
以上、新型日野デュトロの開発全体のとりまとめ役である日野自動車製品開発部小型トラック担当の熊坂正弘チーフエンジニアの話を要約してお伝えしました。次回は、新型日野デュトロハイブリッドについてご紹介します。