3月30日付のブログで、被災地における道路の啓開・復旧に尽力した国土交通省東北地方整備局の目覚ましい働きぶりをご紹介しましたが、一昨日、NHKテレビでも論説委員による東北地方整備局への高い評価が放送されました。見ている人はちゃんと見ているんですね、ちょっと嬉しくなりました。
非常時には、ひとりの人間、あるいは一つの組織の「仕事ぶり」がその後の命運を大きく左右する場合があります。即座に状況を判断し、何を為すべきか何が求められているかを洞察し、先を読んで迅速に行動すること……。福島第一原発という取り返しのつかない事態が、今もなお重くのしかかっている現状からすれば、非常時・緊急時の「初動」がいかに重要か、自明のことだと思います。
このほど東北地方整備局は、ホームページで道路啓開と応急復旧が迅速に達成できた理由を明らかにしましたが、そこには不断の「備え」と「心構え」が感じられます。あらためてご紹介したいと思います。なお掲載の写真は、すべて東北地方整備局のホームページから転載させていただきました。
被災直後の大船渡市の様子
被災直後の多賀城市の様子
道路啓開が迅速に達成できた理由
道路啓開とは、1車線で緊急車両のみでも、とにかく通れるよう(迂回路も含め)、ガレキを処理し、簡易な段差修正などにより救援ルートを開けることをいいます。東北地方整備局では、東日本大震災翌日(3月12日)には、東北道、国道4号から太平洋沿岸主要都市へのアクセスルートを11ルート啓開し、確保。3月15日までに15ルートを確保しています。さらに3月18日、すなわち震災から1週間で、国道45号等、太平洋沿岸の縦方向の道路啓開を推進し、97%が通行可能にしました。
この道路啓開が短期で完了した理由について、東北地方整備局では三つの理由をあげています。
まず第一は、「橋梁の耐震補強対策により被災が小さかったこと」。これは、阪神淡路大震災での道路の被害を踏まえ、これまで東北管内490橋の耐震補強対策を実施してきた結果、落橋などの致命的な被害を防ぐことが出来たことを意味します。例えば、国道13号福島西道路の高架橋では、落橋防止機能が働き、装置が破壊されるほどの地震動があったといいます。その結果、落橋防止装置の取付アンカーボルトが一部破壊されたものの、落橋は防ぎ、装置は最大限機能したと考えられています。
落橋防止装置(写真中央)の一部破壊
落橋防止装置の取付アンカーボルトが一部破壊
第二は、「『くしの歯作戦』により16ルートの道路啓開に集中したこと」。これは、震災直後に内陸から被災地への啓開ルートを「くしの歯」として集約した16ルートを明確にしたことにより、集中的に点検・調査を実施し、道路啓開を優先できたことを指します。東北地方整備局では、三陸沿岸地区の道路啓開を被災地の復旧・復興のための最重要課題と位置づけ、東日本大震災当日の3月11日に、津波被害で大きな被害が想定される沿岸部への進出のため、「くしの歯型」救援ルートを設定することを決断。その第1ステップとして、東北道、国道4号の縦軸ラインを確保。次いで第2ステップとして、この縦軸ラインから東西に展開する「くしの歯型」16ルートの確保に着手します。特に震災からわずか2日の3月12日に11ルートの東西ルートを確保したことは、一刻も早い救援を要した被災地にとって希望をつなぐ架け橋となりました。さらに第3ステップとして、国道6号、45号の啓開に挑み、前述のように3月18日には97%の啓開を終了しています。
第三の理由は、「災害協定により地元建設業等の協力が得られたこと」。沿岸部の国道45号等の道路啓開については、建設業界と事前に災害協定を締結しており、震災直後から、地元建設業等の協力が得られたことが大きな効果を発揮しました。ちなみに協力したのは、地元建設業や内陸部の建設業など全52チームに及ぶそうです。
岩手県山田町の啓開作業
岩手県陸前高田市の啓開作業
気仙沼市最知地区の啓開作業
宮古市市街の啓開作業
宮古市田老町地区の啓開作業
松島地区の啓開作業
多賀城市市街の啓開作業
南三陸町戸倉地区の啓開作業
啓開作業後の釜石市市街
啓開作業後の多賀城市