ドイツ・トラック紀行 その7

ドイツ・トラック紀行 その7

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左:中国人と思われる団体来場者/中:アナドール・いすゞの小型バス/右:CAMCのダンプ・トラック

今回の「IAA」にはいつにもまして中国人の来場者が多かった。会場で出会う東アジア系の人間は、おそらくそのほとんどが中国人で、それもかつてのようにメジャー片手に欧州車の寸法を計りまくるトラックメーカーの開発陣とおぼしき人間よりも、観光を兼ねて来場したような、運送会社などトラック関連の富裕層と見られる来場者が目立った。その意味では確かに中国パワーの底力をまざまざと感じたが、反面、会場で見かける日本人は少なく、中国人の「10」に対して日本人は「1」行くかどうかである。「上げ潮」の中国に対して、我が国に関しては「落日」とか「退潮」とか「落ち目」とか、どうもネガティブな言葉が浮かんできてしまうのである。

トラックメーカーとしては、ヨーロッパで小型トラックを販売している三菱ふそう、日産自動車が今回も元気に出展しているが前回鳴り物入りでエルフやフォワードを出展した(実際に和太鼓を持ち込んで景気づけをしていた)いすゞ自動車がまったく音沙汰なしだったのはどうしたわけだろう。実は事前に入手した出展者リストにはいすゞ自動車の社名があったので、てっきり今回も出展するものと思っていたのだが、社名を頼りにいすゞブースを訪ねてみたら、そこはいすゞがトルコのアナドール社と合弁で事業を行なっているローカル・バスボディのブースであった。

これまでお伝えしてきたように、やはり「IAA」はトラックの技術やマーケットトレンドの世界の中心であると思う。その世界の中心に立つと、日本という国は、まさに極東に位置する世界の外れにある遠い国に思えてしまうのだ。ヨーロッパに商用車の販路を持たないメーカーが「IAA」に出展する意味はないではないかと言われてしまえばそれまでだが、いま世界レベルでの技術競争に名乗りをあげないことには、日本メーカーの存在感はますます薄くなってしまうのではないか。例えば、三菱ふそうがハイブリッド技術によって、ダイムラー・トラックグループの中で「存在感」を発揮したように、段違いのスケールメリットを発揮する海外メーカーに対して、オンリーワンの飛び抜けた技術的なアピールポイントを持たないことには、日本のメーカーもやがて中国などの後発メーカーに追いつき追い越され、いま目論んでいるアジア市場での覇権など、もろくも崩れ去ってしまうのではないか。

特に「外交オンチ」の日野自動車は海外進出が遅れ気味だが、民族系のメーカーとして外資と手を携えない方針なら、むしろ世界の頂点で技術開発競争を展開する気概を見せて欲しかった。ヨーロッパのトラックが志向するハイブリッドが「省燃費」であり、それが今後とも世界のトラックの共通のテーマである以上、商用車のハイブリッドで圧倒的な実績を有する日野自動車が、いま世界のテッペンで戦わないでどうする!?、そんな思いがしたのである。

まさか「ヨーロッパにまなぶべきことは、もう何もない」ということではないだろうが、一部のメーカーを除いて、「IAA」における中国パワーの台頭と日本の斜陽の落差はあまりにも大きい。目先のことに気を配ることも大切だろうが、世界的視野に立ってトラックのトレンドを展望する「大きさ」も時には必要なのではないか。生き残りをかけた戦いはこれからが本番だ。(キャップ)

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