今回の「喜連川研究所30周年記念フェスティバル」に関連して、三菱ふそうは、我々メディアに対してはさらに盛りだくさんのメニューを用意してくれた。その1つが「ふそう名車復元プロジェクト」のレストア車のお披露目と試乗である。2008年4月に発足したこのプロジェクトは、「レストア技術の習得」「三菱ふそうの歴史を伝える」「活動を通じて三菱ふそうへの愛着を高め、モチベーションの向上を図る」を狙いに、開発/実験部門に所属する社員を中心に総勢29名の有志によって結成されたもの。活動は、有志が休日に集まり、喜連川研究所や川崎工場の2箇所の作業場で行なっているという。三菱ふそうの歴代名車のうち、大型トラック4台、中型トラック5台、小型トラック5台、小型バス1台の計15台を復元する予定。このうち今回お披露目されたのは、いずれも小型トラックのキャンター3台で、1970年式の「T91A」、1970年式の「T95AD」(ダンプ)、1975年式の「T210C」である。
車両は長年、喜連川研究所の野外で保管されていたため腐食が進んでいたが、レストアの目標を「動態保存」に定め、部品レベルまで分解・整備し、補修が不可能な部品や欠損部品は自ら製作し、走行可能な状態にまで完成させたという。実際、テストコースでの我々の試乗にも何ら支障なく応えてくれたし、「T95AD」はダンプアップの作動も滑らかであった。また、レストアを待つ車両も特別に見せてももらったが(今では屋根付きのドームに保管されている)、正直言って、かなりのオンボロである、レストア作業はさぞやり甲斐があるに違いない。
喜連川研究所30周年記念フェスティバルでは、これからレストアにかかる1950年代の大型ボンネットトラックの「T33」やレストア中の4代目キャンター「FE114」なども展示されたが、このプロジェクトのメンバーのご家族なのだろう、娘さんから「あれ、うちのパパが写真に写っている!?」の声。「そうだよ、パパは今、このトラックを復元しているんだよ」といったやりとりも聞かれた。
トラックメーカーはこれまでガムシャラに突っ走ってきた。後ろを振り返る余裕なんかほとんど無かった。しかし、こういう時代だからこそ、トラックの文化的価値を見直し、メーカーとしての物づくりの足跡をきちんと形として残すことも必要なのではないか。トラックをつくる仕事もまた、愛する家族に誇れる仕事なのだ。(キャップ)