横浜ゴムとMETRIKAは、このほどトラック・バス用タイヤの打音から空気圧の状態を判定するAI(人工知能)を搭載したアプリケーションを開発し、実証実験を開始した。運送事業者に義務化されている日常点検を効率化する同技術、果たしてどんなものなのか?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/横浜ゴム、フルロード編集部
手軽かつ高精度な空気圧判定で物流業界の課題解決に貢献
横浜ゴムが今回開発したAI(人工知能)を活用して空気圧状態を判定する技術は、これまでドライバーの経験に依存していたタイヤ空気圧の打音点検にAIを導入することで、判定精度向上による安全運行、省力化によるコスト削減や業務効率化、適切な空気圧管理による燃費向上が期待でき、さまざまな物流課題の改善に貢献できるというもの。
トラック・バス用タイヤの空気圧の日常点検においては、空気圧ゲージによる計測はバルブ故障やエア漏れのリスクがあるほか、「TPMS」などを活用するリアルタイムのモニタリングはコスト面での課題などがあり、依然としてハンマーによる打音点検が主流となっている。
しかし、打音のみで空気圧が適正かを判断することは熟練のドライバーでも容易ではなく、明らかに違いを聞き分けられるくらいになると、パンクしていなくてもすでにだいぶ内圧低下が進んでいる状態といわれる(内圧低下で走行するとタイヤにダメージが蓄積される)。
こうしたことから手軽かつ正確に空気圧の状態を判定できる方法が求められており、横浜ゴムはこのニーズに応えるためMETRIKAと協力して、さまざまな環境音の中からタイヤの打音を識別し、打音がいつからいつまで発生したか(打音区間)を抽出し、抽出された打音に基づいて空気圧を予測するAIアルゴリズムを開発。
このAIを搭載した専用のアプリケーションを試作し、現在、運輸会社での実証実験を行なっている。
同技術が実用化されれば、スマートフォンからタイヤの打音をアプリに録音するだけで空気圧値や充填の必要性をアプリ上で視覚的に把握でき、専用機器の設置や判定スキルの習得なしで、誰でも高精度な空気圧点検が可能になる。
今後は、実証実験を通じて、AIアルゴリズムの精度やアプリケーションのユーザビリティのさらなる向上を進めるほか、IoTを活用して最適な商品および運用プランの提案を迅速に行なう横浜ゴム独自の次世代タイヤマネジメントシステム「T.M.S(ティーエムエス)」との連携も計画しているという。
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