史上初の電動専用セミトレーラ「アインライド・トレーラ」
いっぽう、「アインライド・トレーラ」は電動のトラクタ(けん引車)と組み合わされることを前提とした電動のセミトレーラ(被けん引車)だ。同社によるとこうした専用のトレーラは他に例がないという。
公開されたのはハードウェアのデザインが中心で詳細は不明だが、道路輸送用の電動セミトレーラで、フリートの効率化と運行コストの最適化に対するソリューションとのこと。またアインライドの電動車両や無人運転車両とシームレスに統合し、更なる効率をもたらすそうだ。
もちろんトレーラは他社の電動セミトラクタにも対応する予定だ(アインライドの電動大型トラクタはBYDやスカニアからの調達、オランダのダフ製トラックの改造などで対応している)。
アインライド・トレーラとサガを組み合わせた場合、輸送する貨物に関するリアルタイムデータにより、AI(人工知能)ベースの様々な機能を利用できる。例えば、積み込みのルート計画、積載率の計算、盗難防止のための貨物モニタリング、予防整備などだ。
重要なのはトレーラ側のシャシ下に320kWhのバッテリーを搭載することで、フル充電による航続距離は650kmも伸びることになる。トラクタ側のバッテリーと合わせれば1000km級の航続距離を達成することになり、バッテリーEVトラックによる長距離輸送も視野に入る。
欧米では長距離輸送の大部分をトレーラが担っている。いっぽう車両のデジタル化が進むなかでも、トラクタから切り離されると電源を確保できないトレーラはデジタル化が遅れている車両だ。動力を持たないトレーラを「電動化」した理由はこの辺りにありそうだ。
デザインは今後さらに改良を重ね、最初のパイロットを2023年中に完了するというスケージュールで生産を計画している。
輸送の電動化を助ける「サガ」
デジタルプラットフォームの「サガ」はパソコンやスマホで言えばオペレーティング・システム(OS)に相当する機能で、エンド・ツー・エンドの電動・自動運転による貨物輸送に関連する一連のアプリがこの上に構築される。
アプリには次のようなものがあり、新機能は今年10月から提供を開始するとした。
●エボルブ : 電動化・自動化の計画を策定し、環境インパクトを評価する
●エクスプロア : コスト、積載効率、CO2排出量などを可視化する
●ブック : 貨物の出荷から配送までを追跡し、荷主の管理システムに統合する
●オーケストレート : 電動トラックと充電器のネットワークをリアルタイムに表示し、自動化された輸送計画と人間の間の橋渡しをする
またアプリ開発者用のAPIとして「アインライド・エクステンド」が発表された。APIによりアインライドのソフトウェエアへのアクセスが可能になり、荷主側のシステム開発などで活用することができる。APIプラットフォームは2022年末までに提供を開始する予定。
同時に、ドライバーへ指示を出す「デリバー」、物流ターミナルで使う「ドック」、利益率モニタリングの「オウン」など3種類の追加アプリを、2023年にリリースする予定も発表されている。
車両のデジタル化や電動化・自動運転はトラック業界のトレンドでもあるが、無人のキャブレスEVトラックを開発し、ドライバーに代わってオペレータを雇用するアインライドは、一歩進んで「輸送」自体のデジタル化・電動化を目指している。欧州・米国以外への展開を含めて、今後も目が離せない存在だ。
【画像ギャラリー】アインライドの電動トレーラとキャブレストラックの代名詞となった「ポッド」(14枚)画像ギャラリー