世界に30台だけ!? コンパクトなスカニアがベースの「重量物仕様トラッククレーン」の特徴とは?

■コンパクトな車体で吊り上げ35tを誇る

3段式のブームは長さ7~15mをカバー。写真はすべて伸ばした状態だが、実際の作業では一番短い状態がメインとなる。一番短い状態での吊り上げ能力は35tと強力。さまざまな現場で重宝されそうだ
3段式のブームは長さ7~15mをカバー。写真はすべて伸ばした状態だが、実際の作業では一番短い状態がメインとなる。一番短い状態での吊り上げ能力は35tと強力。さまざまな現場で重宝されそうだ

 OC-350N(重量物仕様)は、その名が示す通り35tの荷物を吊り上げることができるトラッククレーン。天井の低い工場建屋内などでの作業に有利なショートブームに、揚程(地面からフック先端部までの距離)が稼げるショートフックを組み合わせ、重量屋の業務に最適化されているのが最大の特徴だ。

 主なスペックはブームの長さが7~15m、クレーン容量(許容荷重)が7m時で35000kg、11m時で25000kg、15m時で16600kg、最大地上揚程が15.4m、最大作業半径が13.6m、ブーム起伏角度が-2.9~+72度となっている。

ベースとなったスカニアの4軸8×4/4シャシーは同車両のため専用設計されたもの。短いホイールベースは機動性アップに寄与。ただ、そのぶんエアタンクや燃料タンクなど艤装品のレイアウトには苦労したようだ
ベースとなったスカニアの4軸8×4/4シャシーは同車両のため専用設計されたもの。短いホイールベースは機動性アップに寄与。ただ、そのぶんエアタンクや燃料タンクなど艤装品のレイアウトには苦労したようだ

 ベース車両は専用設計のスカニア社製4軸8×4/4リアエアサスシャシー(P410LB8×4*4MNA)を採用。

 クレーンを搭載するためシャシーフレームの後端部がカットされ、アウトリガーを搭載するためエアタンクやアドブルータンクも移設。7150mmというショートホイールベースにより従来のTL-300ERと同等の旋回性を実現する。

■日本のトラックでは見られない独特の駆動方式

8×4/4という駆動方式は日本のトラックでは見られないもの。最後軸はシングルタイヤかつステア機能を搭載し、現場での機動性アップに寄与する
8×4/4という駆動方式は日本のトラックでは見られないもの。最後軸はシングルタイヤかつステア機能を搭載し、現場での機動性アップに寄与する

 ちなみに「8×4/4」という駆動方式の表記は欧米のトラックでよく見られるもの。前半の「8×4」は4輪駆動の8輪車という意味(ダブルタイヤを1輪として数える)。後半の「/4」は8輪のうち4輪がステアするという意味で、同車両の場合はフロントに加えリア(最後軸)にもステア機能付きシングルタイヤを採用する。

 この最後軸のステア機能は旋回性アップに寄与。また、建屋内で車両を動かす際に、タイヤ痕が残りにくくなるというメリットもあるという。

キャブは汎用のPシリーズを採用。ベッドレス&天井も一番低い作業重視仕様だ。見た目のインパクトが強烈な煙突マフラーは、排気ガスが床のホコリやチリを巻き上げるのを防ぐためのものである
キャブは汎用のPシリーズを採用。ベッドレス&天井も一番低い作業重視仕様だ。見た目のインパクトが強烈な煙突マフラーは、排気ガスが床のホコリやチリを巻き上げるのを防ぐためのものである

 キャブは汎用のPキャブのデイキャブ・ロールーフ仕様。エンジンは従来のTL-300ERの倍近い410馬力を発揮。特徴的な煙突マフラーは建屋内で作業をしている時に排気ガスがホコリやチリを巻き上げるのを防ぐためという。

デッキやハシゴ部、前方左右の収納スペースなどの縞板加工は本所自動車工業の職人の手作業によるもの。つなぎ目がわからない丁寧な処理は本所ならでは。スペース有効活用のためスペアタイヤは立てて搭載される
デッキやハシゴ部、前方左右の収納スペースなどの縞板加工は本所自動車工業の職人の手作業によるもの。つなぎ目がわからない丁寧な処理は本所ならでは。スペース有効活用のためスペアタイヤは立てて搭載される
トラッククレーンはトラックの運転席とは別にクレーンの操縦席を持つ。クレーン操縦席への乗り込みはデッキ部に格納されているハシゴを展開して行なう
トラッククレーンはトラックの運転席とは別にクレーンの操縦席を持つ。クレーン操縦席への乗り込みはデッキ部に格納されているハシゴを展開して行なう

 いっぽう、ボディ全体の細かな架装は一品モノの平ボディで有名な本所自動車工業(栃木県足利市)が担当。リアフェンダー兼用のデッキ、サイドガード、デッキ昇降用のハシゴの縞板加工のほか、デッキ左右の収納スペースなどは職人の手作業でつくられたものだ。

 なお、クレーン操縦席への乗り込みはデッキ部の格納式ハシゴから行なう。左右に搭載されるハシゴはドイツ製で、不使用時はコンパクトに畳むことが可能だ。

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