ルノー・トラックスは2025年11月18日、小型商用車から大型BEVトラックまで新モデルを一挙に発表した。純電動の大型トラックは、780kWhのNCAバッテリーにより航続距離が最大600kmに達したほか、バッテリー搭載数を減らして積載量を確保したモデルも用意する。
中型BEVトラックでは総重量12/14トンのモデルが追加されたほか、小型商用車に建設業界向けのモデルが設定された。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks
ルノーのBEV大型トラックに新モデル
フランスの大手商用車メーカー、ルノー・トラックスは2025年11月18日、バッテリーEV(BEV)大型トラック「Eテック T」の新モデルを発表した。「Eテック T 585」(以下、T585)と「Eテック T 780」(以下、T780)だ。後者は780kWh容量の新型バッテリーにより、充電一回当たりの航続距離が最大600kmに達した。
(なお、同グループのボルボも5月に780kWhバッテリーを搭載する長距離輸送用BEV大型トラックを発表している)
新モデルでは運送会社の特定のニーズを満たすことを重視し、T780は航続距離、T585は積載量に重点を置いた。これに合わせて、従来から展開されている「Eテック T」は「Eテック T 540」(以下、T540)にリネームされ、内容も一部変更された。T540は地場輸送などの集配送用途に重点を置くモデルとなる。
T780とT585で航続距離/積載量を向上できたのは、電動アクスル(eアクスル)の採用によるものだという。電動パワートレーンの様々なパーツを車軸に集約するeアクスルによりサイドメンバー(ハシゴ型フレーム前後方向に配置された左右のレール)間のスペースが確保でき、ここに追加のバッテリーパックを搭載することが可能になった。セントラルドライブ方式だと、サイドメンバー間にはモーターやドライブシャフトが配置され、余裕がない。
また、新型車ではNCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)リチウムイオン電池を採用している。テスラの「モデルS」などにも搭載されているNCA電池は、NMCやLFP電池に比べてコストや安全性などの課題が指摘されるもののエネルギー密度が高く、BEV用バッテリーとしては最高水準のパフォーマンスを誇る。
さらに、新しいレイアウトに収まるようにバッテリーはL字型のデザインとなった。ルノー・トラックスはこれらのバッテリー性能を最大8年間もしくは100万kmまで保証している。
585kWh容量のバッテリーを搭載するT585は、航続距離は460kmとなるが、バッテリー搭載数が少ない分、積載量が増加し、最大28トンの積載量を実現している(実際に認められる重量は各国・地域の規制による)。
780kWh容量のバッテリーを搭載するT780は連結総重量(GCW)32トンで600kmという航続距離を誇り、何よりも航続距離を重視する運送会社向けに設計された。
停車時間を可能な限り削減するため、両車ともMCS(メガワット・チャージング・システム)による720kWでの超急速充電に対応する。MCSが利用できれば45分の休憩中に航続距離は350km回復する計算だ(欧州では4.5時間の運転につき45分の休憩がトラックドライバーに義務付けられている)。
また、標準的なCCS方式による最大350kWでの充電にも対応している。新モデルに加えてルノー・トラックスはT540 4×2にもアップグレードを施し、航続距離は450kmとなった。
新モデルは長距離輸送向けに設計された6×2トラクタで、エアサスペンションにより運転時の快適性とともに、連結時の優れた操作性を実現した。なお、リアアクスルはステアリング可能なリフトアクスルとなっているため、実際の操縦感覚は4×2トラクタと同等だという。
アップグレードされたT540を含む3モデルは、フランスのブール=カン=ブレス工場で製造され、現在注文を受け付けているという。なお、同工場は2023年から大型BEVトラック(「Eテック T」および「Eテック C」)の製造を行なっている。


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