福岡の矢野特殊自動車は、特に大型冷凍車の製造で名高い架装メーカーですが、タンクローリや車両運搬車など特装車も数多くつくっており、カーゴ系と特装系の両方を手がける日本でも稀有な架装メーカーとして知られています。また、現在「フルロード」に連載中の「矢野特殊自動車物語」でもご紹介しましたが、現存する最古の国産自動車をつくったメーカーでもあり、非常に歴史のあるメーカーでもあります。
そんな矢野特殊自動車に今回お邪魔したのは、フードローダーについてお話を聞いて製造過程を見せてもらうことにありました。フードローダーとは、旅客機に機内食などを運びこむ車両のことで、実は、矢野特殊自動車では空港サービス車両も手がけています。空港サービス車両というと、千葉県の成田に工場のある犬塚製作所が有名ですが、今年の夏に矢野特殊自動車を訪れた際、いつにも増してフードローダーをたくさんつくっていたので、今回あらためて取材させていただいた次第です。それにしても、東の特装車のパイオニアである犬塚製作所と西の特装車のパイオニアである矢野特殊自動車が、今も共にフードローダーを手がけているというのは、何だか興味深い話です。
さて、そのフードローダーですが、早い話、高所作業車と冷凍車のハイブリッドといったなりたちで、シザーリフトの上に冷凍コンテナが載っているような造りになっています。つまり旅客機の機内食の搬入口まで冷凍コンテナをリフトし、そこから機内に運び入れるんですね。通常の冷凍車では前立ては開きませんが、フードローダーでは前立てが開いて搬入口となり、床がスルスル自動で伸びて、旅客機の搬入口へのアプローチとなります。また、前立ては上に持ち上がって屋根となり、さらに側面も内蔵の壁がスライドして伸び、雨除け風除けの役目を担います。こういう仕組みを見ると「おお、よく出来てるな!」とコーフンしちゃいますね、特装車の工場訪問くらい「なるほど!」が連発する楽しい取材はありません。
ちなみにフードローダーは、機内食をつくっている工場と空港を行き来するので、構内専用車ではありません。空港近くの道路で、ちょっと腰高な冷凍車を見かけたら、それはフードローダーかもしれません。いずれ「フルロード」でご紹介する予定なので、お楽しみに……。
製造中のフードローダーのコンテナ
完成したフードローダー。見かけはちょっと腰高な冷凍車といった印象です
庫内は冷凍車とほとんど変わりません
前立てが上がり、床がせり出し、左右のドアから内蔵の壁がスライドして、搬入口へのアプローチとなります
外から見ると、こんな感じ。フードローダーには「なるほど!」がいっぱい詰まっていました
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